ある意味期待通り
一日空けての投稿となりました。どうしても、考える時間が欲しかったので許してください
ぜひ、最後まで読んでください!!
ギルドは常に冒険者が出入りしている。傷だらけになっている者、戦利品を自慢する者、報酬で宴をする者、彼らに共通していることは、冒険者という職に誇りを持っていることである。1度しかないこの人生、その命の火が消えるその時まで、全力で生きていく。故に、彼らは強い。どこかの誇り高き戦士のように、冒険者という誇りが彼らを強くしている。
「やっぱり賑やかだなぁ~。俺の想像通りだ!」
そして、このギルドの入口に、冒険者としての人生を歩もうとしている1人の男が立っていた。彼の名前は、青木大介。このモルゴンに召喚された日本人である。その後ろを歩いてくるのは、同じく異世界召喚によりこの世界にきた女性、夏川静香と、ガンシード王国に仕える2人のメイド、ユイとマイである。
「気に入っていただいたようで何よりです。大介様、静香様」
「色んな奴がいるなぁ」
「冒険者登録はあちらです。行きましょう」
そう言って、4人は酒場を後にし、その奥にあるギルドの受付へと向かった。道中数々の冒険者に見られながら。無理もない、はたから見れば、美女が3人を個性のない男が引き連れているように見えてしまう。今この建物で一番の異色であるのは、まず間違いない。人に見られながら歩くのはとてもじゃないが恥ずかしい。そして視線を前にやると、苦笑いをしている1人の女性がカウンターの奥に立っていた。
「珍しい顔ぶれね。ユイちゃんとマイちゃん、そちらのお2人はお知り合い?」
「おはようございます、フランカさん。こちらの2人は、い・・・他国から移住してきた方たちです。王女の命により、城で面倒を見ることになっています。今日は2人の冒険者登録をしに来ました」
一瞬異世界と言いかけたユイだったが、なんとか誤魔化した。バレてないよね?ね?
「なるほど~。でも、他国の人を城で面倒みるなんて珍しいわね。ま、いいわ。初めまして、私の名前は、フランカ=ブローズよ。フランカでいいわ」
「初めましてフランカ、俺は青木大介だ。俺のことも大介って呼んでくれ。んで、こっちが夏川静香だ。よろしく!」
「初めまして、私のことも静香って呼んでくれ、フランカ」
「ダイスケ君とシズカちゃんね。よろしく。他国にはこんな名前の人もいるのね、世界は広いわ」
おそらく、このモルゴンのどこを探しても、この形の名前には出会えないだろう。しかし、ギルドの人間が把握しきれないほどに、この世界は広いのだろうか。
「それじゃあ、早速だけどあなたたちの属性を調べるわね。ちなみに今まで魔法の経験は?」
「俺も先輩も今回が初めてかな」
「了解~、あなたのほうが先輩なのね。よく見ると頼りがいのある女性ね。私も惚れちゃいそう?」
「フランカさん、そういうのは後にしてもらえますか?」
「んも~。ユイちゃんったらいじわるぅ~、ま、いいわ。とりあえずシズカちゃん、こそ水晶に手をかざして頂戴」
水晶きたあああああああああああ!!!大介は、ワクワクと緊張で興奮気味だ。そして、静香が言われるまま水晶に手をかざした。すると、水晶にいくつかの光が浮かんできた。光はそれぞれ色が付いていた。
「おぉ~、シズカちゃんは『雷』と『光』の適正だね!2つ適正があるのはちょっと珍しいよ~。これは、将来つよくなりそうだね!ん?この端っこにあるのなんだろう。黒い光・・・でも闇属性とは違う。とても真っ黒で深淵を覗いてる感じ。なのにどこか温かい。こんなの初めてよ」
「なんだ?私すごいのか?」
「正直、2属性適正は喜んでいいわ。でも、もう1つの方は私にはわからない」
今まで見たことのない光を目にして、動揺が隠せないフランカ。しかし、それを除いても静香には2つの属性適正があった。充分当たりだろう。さて、気になる大介の適正は・・・
「じゃあ、次はダイスケ君ね。はい、手かざして」
「よ、よし・・・!」
これからの異世界ライフを分ける運命の瞬間。大介は、合格発表を見ている時を思い出した。この緊張は何度経験しても慣れるものではない。そして、光が浮かんできた。
「ダイスケ君の適正は、『無属性』ね」
「・・・え?無属性ってどうゆうこと?属性は6種類じゃなかったの?」
正直大介は6種類全部の適正があると言われて、チートライフを送るつもりだった。それが、まさかの無属性ときた。脳内に思い浮かべたビジョンが一瞬にして壊れた。
「確かに、基本属性は6種類よ。でもこれは無属性っていって、特殊属性に含まれるものよ。そして唯一無二の特殊属性。これも珍しいもの・・・ん?君にも、さっきと同じ黒い光が」
「え?フランカ、その光の属性って分からないのか?」
「えぇ、今のところ分からないわ。取り合えず、私なりに調べておくわ。結果が分かったらすぐに教える。もしかしたら、新しい特殊属性の可能性もあるしね」
大介としては、この黒い光に全てを賭けるしかなかった。これじゃあ、勇者なんてなれない!しかし、もう1つ小さいが、同じく黒い光があったことは誰も気が付いていなかった。
「さて、次は職業ね。今度は、この変形石を握って。この変形石は、ギルドで改良してあって、握るとその人にあった武器の形に変わる仕組みになってるの。さ、どうぞ」
今度は大介と静香は、黒い石を渡された。一見ただの黒い石だが、本当に形が変わるのだろうか。そんなことを考えていた矢先に、変化が現れた。なんということだろう、さっきまでただの石だったのに粘土のようにみるみる形を変えていった。あっという間に、大介が持っていた変形石が剣の形に変わり、静香の変形石はピストルの形になった。
「なるほど、ダイスケ君は剣士タイプね。そして、シズカちゃんの方はガンナータイプね。2人とも似合ってると思うわ」
「ガンナーか、悪くないな。大介も剣士で良かったじゃないか」
「まぁ、なんとかって感じですよ・・・ま、落ち込んでても始まらないので、俺は剣を極めます」
なんとか心を切り替えることができた大介だったが、明らかにテンションは下がっていた。しかし、ここで雰囲気を壊すまいと、男の意地を見せてくれたようだ。
「あと、剣士やガンナーといっても戦い方はいっぱいあるの。ギルドでは、冒険者になった人に武器を提供しているから、それを見て自分にあった武器を見つけてね」
「なるほど、それは有難いな。な、大介」
「そうですね、じゃあ、早速だけど見せてもらえるかな?」
そう、剣士やガンナーというのは、あくまでも大きなカテゴリにすぎない。どんな武器で戦うかは個人の好みである。故に、同じ剣士だとしても様々な戦い方があるのだ。
「ユイとマイにも選ぶの手伝ってほしいな。頼めるかな?」
「もちろんです。では行きましょうか」
「武器庫はこっちの部屋よ。ついてきて」
4人はフランカに言われた通り、案内された部屋へと入っていった。中に入るとそこにはいろんな武器が、カテゴリ別で並んでいた。
「久しぶりにこの部屋に来ましたね。お姉ちゃん」
「ん?ユイとマイもこの部屋に来たことがあるってことは、2人も冒険者なのか?」
「正確には、城の護衛に必要な技を磨くためですが、私たちも一応職業があります。ちなみに私は、ナイトで、マイはウィザードです」
そんなこと初めて聞いた。ということは、ユイに剣技を教われば、大介は一気に強くなるのではないだろうか。しかし、こういう類の修行はきつすぎるという定番が大介の中にはあった。自分の根性がどこまでのものなのか知る、いい機会だろう。
「それじゃあ、この中から自分にあった武器を探してね」
「めちゃくちゃ種類あるんだなぁ。でもやっぱり俺は両刃の剣がいいな。いや、でも片刃の剣も侍っぽくてかっこいいなぁ。んん~迷う!ユイは何が俺にあっていると思う?」
「最悪、後からでもその気になれば武器は変えられるので今は一番気に入ったものでいいと思います」
大介は、優柔不断になってしまった。ユイに助けを求めたが、結局は自分の好み。他人に分かるはずなどない。分かってはいながらも、自分で決められない。
「ん?なんだこれ」
その時大介が見つけたのは、剣の外側は黒く、内側は紅色に輝く剣だった。どういう原理で光を放っているのかは不明だが、おそらく剣に魔力でもあるのだろうか。
「ん、それは一体なんでしょう。私も初めて見ました」
「あ~それねぇ。以前、冒険者の1人が持ち帰ってきたのだけど、どういう訳が未来に託してほしいって言われたから、ここに保管してあったのよ。名前は確か・・・約束の剣だったわね。ただ、これは使用者にしか分からないらしいのだけど、熟練度に応じて武器の名称が変わるらしいわ。言うなれば、剣と絆を作り上げることで、剣が相棒と定めるみたい。ふふふ、まるで生きているみたいね」
その瞬間大介は直感で分かった。これが自分の武器、否、相棒なのだと。約束の剣と言われたその剣は、大介の心を奪った。
「俺、こいつにする・・・!約束の剣。もうこれ以外は考えられない!フランカ、これ持って行っていいんだよね?」
「ん?まぁ、そうね。未来に託せと言われたから、これはダイスケ君が持っていきなさい。いつか、この剣を託した冒険者に会えるといいわね」
「あぁ、その時までにこいつをちゃんと扱える剣士になってみせる!そして、いつかは、勇者に!」
ようやく、冒険のビジョンが見えてきた。だが、剣が生きているなんてあるのだろうか。そんなことを考えていたら、静香の方も選び終わったみたいだ。
「お、大介。その剣なんで光ってるんだ?」
「ん?あぁ先輩。これは約束の剣って言うらしくて、何でも、冒険者が未来に託したっていう剣らしいです。先輩も決めたんですか?」
「あぁ、私は両手銃にした。あまりごついマシンガンとか持っても、小回りが利かないからな。これが一番ストレスを感じなそうな気がしたんだ。んで、名前はクローチェってんだ。どうだ?格好いいだろ?」
「なんか、バ〇オハザードみたいで格好いいですね」
なんだかんだで2人とも様になっていた。大介は約束の剣と、どこまで絆を深めることができるのだろうか。
「よし、じゃあ武器も選び終わったことだし、最後にギルドマスターのところへ行って、ステータスカードを作れば晴れて君たちも冒険者よ」
そう言うと、武器庫をでて2階へと案内された。そして、ギルドマスターの部屋へと5人は入っていた。
「マスター。新しい冒険者を連れてきました。ステータスカードの発行お願いします」
「ん?おぉ、初めまして。私がこのガンシード王国冒険者ギルド本部のギルドマスター、ラジマ=レビオーバーだ。よろしく」
ついに、職業が分かりましたね。大介の魔法適正をうばった罪は重いですねw
今回長くなっちゃいましたけど、意外とこれくらいのほうが、読み応えありますかね。
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では、次回もご期待ください!