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11:11:11世界の真ん中で  作者: 白い黒猫
脱出の為の破壊
8/27

壊れだす世界

 スマフォのアラームで目を覚ます。アラームを止めて画面を見ると【7/11 06:00】の文字。俺は半ば予想していたとはいえ、この状況にため息を付くしかない。

 リモコンでクーラをつける。

 スマフォを手に高橋に連絡を入れようと番号を入力していたら、その番号から先にかかってくる。高橋も明日に行けなかったようだ。

「高橋、やはりダメだったか……」

『はい……ダメでした……』

 俺はテーブルの上を見るとそこにはリモコンのみ。今日(きのう)の夜に調べ物作業をしていた形跡はまったくない。

 二人でまず会って話すことにした。今日(きのう)と同じ喫茶店で七時に落ち合う約束をして電話を切る。

 待ち合わせ場所に向かうと高橋はもう既にいて手帳に何かを書き入れていた。リセットされた記録を必死に取り戻そうとしているのだろう。時間のリセットで何度なかった事にされても、彼女はあの時間を取り戻そうと手帳に記録を残し続ける。

 こちらに気が付いて手を振ってくる高橋に俺は首を傾げた。パンツ姿とシンプルな、デザインのTシャツ。ジャケットは着ているがいつもに比べてかなり砕けていてカジュアル。

 しかも今日は笑顔で俺を迎えてくる。

「今日は雰囲気ずいぶん違うな」

「いかようにも動けるように、こういう格好してきました! 今日はどうします?」

 俺よりも逞しくこの事態に挑んでいる高橋に、俺はなんかホッとした。俺が守らなきゃならないのに、元気をもらっている。それに比べ自分は情けないなと感じる。

 二人で会ってすることはまず検証の為の報告会。

 十二時を超えようとすると意識が途切れ十一日の起床時間に戻っているという。その間に眠ったとかいう感覚はなく、映画やドラマで場面を切り替えたような感じである。

 十二日になろうとすると強制的に戻され、その先にいけない。何故こんな事になっているのか?

 あの場所に原因があるのか? それとも他の理由があるのか。

 全てが怪しく思えてくる。

 魔法陣と言われても当然な上から見たモンドの構造。それを作った建築家、日廻永遠。


 この件でやたら目にする数字【11】。十一日。あの事故の起った時間は11:11:11。そしてあのモンドの住所が十一屋敷町十一丁目十一番地。建築家日廻永遠が行方不明になった日も十一日。日廻永遠の誕生日も十一月十一日。そして……メールアドレスから気になって改めて会社で調べた高橋の社員データ。彼女の誕生日は一月一日で、ここにも【11】があった。


「私もソレ気になったんですよ! でも【11】って悪い数字でもないんですよね。エンジェルナンバーでいうと寧ろ良い数字で!」

 そう【11】をネットで調べるとまず出てくるのは、怪しげなエンジェルナンバーという占い系のサイト。彼女にとっても【11】は元々意味のある数字、それだからこそ気になるのだろう。

「俺もそれは見たよ」

 ゲートが開く。魂の半身(ツインレイ)魂で結ばれた存在(ツインソウル)に会う。チャクラが全開。宇宙意識に目覚めるといった怪しい言葉ばかりが書いてあった。奇跡の連続とか笑えないものもあった。

 一方英語圏では1の数字は蛇の目と言われており、そのゾロ目はあの有名な【666】より嫌われているという。そのためこの数字をテーマにした映画もあるようだ。またマスターキーナンバーと呼ばれ数字そのものが特殊な強いエネルギーをもつという

 十一日に事故・災難が多いとは言われてはいる。それは有名な【9.11】や【3.11】と人の心に強烈な印象を残しイメージが強いからだ。実は他にもっと厄災日と呼ばれる日はある。


 また、七月十一日は【7+11】で出すと【18】で悪魔の数字となるというのがあった。

これがまた胡散臭い。あの有名な忌数字【666】を足すと【18】になる為にあの数字と同意味をもつという。

今までの大災害のあった日は全て足すと【18】になる日とか言うのもあった。しかしそのうちの一部は西暦まで足して強引に【18】にしてあった。そんな条件を広げたら合計を合わせ放題だろう。もし日時で十八にならなければ、西暦若しくは和暦を入れて、それでもダメならば災害の起こった時間まで加えて足す。といくらでも辻褄を合わせられるものだ。


 今回の竜巻はインパクトこそあるが被害としては小規模。俺達が回避したこともあるが死者はゼロ。軽傷な人のみだと聞く。まあマンションの修繕に関しては被害総額が安い訳ではないかもしれない。とはいえ今まで日本を襲った様々な未曾有な大災害に比べたら小さなものだ。


 【11】の数字がやたら目に付くのは確か。しかし変なオカルト的なモノに囚われると、本質を見失いそうで怖い。


 そういった符号を喜々として語る高橋を見てやや不安を感じる。気合いを入れて頑張っている事もあるのだろう。まだこうして明るく頑張っていられるならそっとそれを見守るべきかもしれない。そして俺は冷静でいないといけないと自分に言い聞かせる。


 俺達が今考えなければならない事は二つ。


 一つは何故このような状況に陥っているのか?

 これが分からない事には解決の糸口すら掴めない。


 二つ目はスズタンという男の正体と目的。

 何故この男が俺達同様に自由に動けているのか? 俺達は余計な事をするつもりはないが、コイツが馬鹿な事をしでかす事で俺達や誰かに変な影響を与える危険性がある。 


 スズタンという男もモンドの現象について探っているようではある。ネットで呼びかけ情報を募っている。そして彼がおしているのは陰謀で竜巻が起こったという説。


「あの男、今日はコチラにいますね」

 高橋の声に俺は頷く。

 今日はモンド内にある二階の喫茶店にいた。

 ここからだと喫茶店windlessの前も見渡せる。タクシーがあの場所より前に駐車するような事があった場合すぐ動けるようにするため。万が一交差点の近くに停めたら、急いでいる人を装ってタクシーを運転手ごと動かす予定だった。今日のスズタンはツナギを着ておらずアイドルのロゴの紫のTシャツにチノパン。大きなリュックという恰好だった。

 タクシー運転手は定位置に車を停め、水筒を手に嬉しそうに喫茶店windlessに入っていくのがみえた。そこには安心する。

 スズタンからコチラは反射が強く見えてない事プラス周囲の人をまったく気にしていない事でジックリ観察出来た。

 スズタンはiPadで手すり等を必死な様子で撮影し、手帳に書き込んでいる。流れ落ちる汗で眼鏡も汚れるのだろう。拭きながら謎の作業を続けていた。

「何しているのでしょうね」

 高橋は、汗を流しながら必死な形相で作業をするスズタンを胡散臭げに見つめながらそう聞いてくる。

「どうやらサーモグラフィーカメラで歩道橋の部分別の温度を測っているようだ」

 俺は景色と言うには不自然な色合いの画を映し出すスズタンの手にある画面の映像を見てそう返す。

「何のために?」

「彼なりに色んな観点から此処を調査しているのだろう」

 この時間の太陽は交差点の東の方から照りつける。その為に、交差点にはマンションの影も伸びない為にかなりの暑さの筈。時間とともにジリジリと歩道橋は暑さを増していく。

 そんな中でもスズタンは作業を止めることなく続けている。十時四十五分スズタンのスマフォが震えたようだ。スズタンはスマフォを弄り去っていく。

 そしてこの一日は、竜巻は来たものの変わらず()()に終えていった。

 今日(次の日)今日(さらに次の日)も鈴木は歩道橋にいた。そこでウロウロとして十時四十五分にスマフォを見て去っていく。

 どうやらその時間にタイマーをセットしてその時間を作業終了時間としているようだ。


 その後にスズタンは相変わらずネットで疑問を投げかけ続けている。しかし変わらぬ反応にイラついてきたのか返す言葉が喧嘩腰になっていた。

 そんな今日を四日続け五日目。

 モンドの二階のコーナーにある喫茶店で俺はアレ? と首を傾げる。外の風景を見渡すがスズタンは歩道橋にはいなかった。

 いつもの席につき、喫茶店windlessの前を確認するがそこにはまだタクシーも青い車も停まっていない。まあタクシーに関しては時間になっていないからそれは当然である。

「どうしたのでしょうか?」

 俺は分からないので顔を横にふる。しかし何故だろうか? 嫌な予感がする。

 スズタンのTwitterを確認すると、珍しくもう呟いていた。時間は九時五十二分。


『今日、ようやくこの悪夢が終わる。いや終わらせる』


 そう言って俯瞰からモンドを撮影した写真がついていた。

 彼はいつも最初のつぶやき始めるのは、歩道橋での謎の作業をした後。どこかで涼み汗を拭きながらしているのだろう。そして次に竜巻の後に、竜巻に対しての内容のツィートをして意見を募るのが流れだった。今日はその遙か前に呟いている。

 この写真に写っているモンドの角度は見覚えがあった。二回目の今日、モンドで何が起こったのか確認する為に行ったホテルのラウンジからのあの風景である。そしてスズタンが一度竜巻を撮影していた場所でもある。

 今の時間は十時二十三分。

 高橋もその事に気が付いたのだろう視線を合わせて頷く。注文していた珈琲を一気に飲み干し店を出た。

 駐車場に戻り二人で車に乗り込み、スズタンがいると思われるホテルに向かう事にする。アイツが何かを企んでいるなら止めないといけない。

 車を発進させ、喫茶店windlessの前を通りモンド交差点方面に車を走らせる。竜巻に巻き込まれた時のショックが残っているせいだろうか? モンド交差点を通る時に身体が少し緊張する。通り過ぎてから身体から不自然な強張りが抜けるのが分かる。


 ドゥガァーン ブゥガン ドゥゴ ゴワン ゴワン ゴワン


 車を走らせモンド交差点を越え十メートル程走らせた時、背後に低い謎の音が起こる。バックミラーに映る景色がオレンジ色に染まっていた。俺はついブレーキを踏み、車を止める。後ろを走る車がなかった為に助かった。

 振り返るとモンドの歩道橋が赤く染まっていた。鉄骨が炎を纏って燃えている。俺は車を少し動かし道路の端に停める。

「高橋! 救急車を呼べ! 安全な場所に車を移動させてニュースの確認を! アイツのTwitterを見張っていろ」

 そう言って俺は車を降りて飛び出した。

 俺は走りならが記憶を手繰る。この時間帯にあの場所を歩いていた筈の人物の事を必死に思い出す。北西タワーから北東のタワーへと四歳くらいの男の子を連れた親子連れが。そして南東から北東に向けてサラリーマンが移動していた。

 俺は北東のタワーから二階にかけあがる。歩道橋への入り口で女性は子供を抱えへたり込んでいる。服など少し焦げているが怪我はないようだ。しかし歩道橋かは細かく謎の爆発音がまだしている。

 母親の腕の中反対を向き、顔を強ばらせて固まっている子供。見開いた子供の視線を追うと、歩道橋のある光景が目に入る。その先でサラリーマンが背中に炎を背負い踊るように身体を動かしている。いや人が生きながら燃えているのだ。母親は呆然と座り込んで子供が見ている光景に気が付いてない。また爆発するような炎が手すりから上がり男は倒れる。

「お子さんを連れてすぐに建物の中に、人を呼んできて!」

 俺の声に女性はハッと我に返り背後の光景に顔を引きつらせる。息子を抱え建物の中に逃げるように入っていった。


 俺はスーツの上着を脱いで、燃えている男の方に走った。

 炎を押しつぶすように被せるがそれだけでは消えない。俺の身体ごと被せ、炎を消そうと試みる。

 俺は男の燃えている髪の炎を手で払うと、手が焼け痛みを感じたが気にしてなどいられなかった。

 こういう場合布を被せて炎を消すというのがセオリーだが、実際やってみるか簡単ではない。夏服のためスーツの布が薄いのがいけなかったのかもしれない。

 突然視界が白く染まった。誰かに身体を起こされる。俺が離れた事で男の背中の炎がまた上がる。それを白い泡に覆われる。別の人物が消火器で俺達に纏わりついていた炎を消してくれたようだ。

 俺はひきずられるようにタワーの方へと下げさせられいった。



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