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第7話 性別不明

第7話 性別不明


俺が女だと思われるのにはちゃんと理由がある。

俺はデッキ内の高コストカードを、好んでアイコンに設定している。

とは言っても数は少なく、BLものに出てきそうな伊達政宗か、

女性化された嫌に冷ややかな佐々木小次郎か、

最近は性別不明な宮本武蔵あたりぐらいだろうか。

そして、連合内での役職も「戦国恋慕」ときている。


「ペルソナさんは女の人ですか?」


おかげでよくそう聞かれている。

共闘で一緒になった人らはもちろん、かつて在籍していた連合員もそう聞いた。

あの兼光さんもわりと最近まで、俺を女だと思っていた。

きっとあんたも俺を女だと思っている事だろう。

このゲームは女が比較的多いと思うが、大体が主婦か夜の仕事をしている女だ。

つまり背後に男の影がある女って事。


そんな中で「ペルソナ」というプレイヤーは、珍しく男の影を感じさせない女、

あわよくば出会いたがってるおっさんらの目には、そう映っているのだろう。

まあ高校生の兼光さんの方が、はるかにレアな存在だが…。


そもそも発言自体少ない俺が、あんたに話しかける事も少ない。

それでもたまに話しかける時は、あえて主語を「わたし」にしている。

男か女かわからなくしてやる、混乱しろよ。

おっさんだろ、あんたは俺を連合の姫にするかい?

いつか姫と出会って、あわよくばいいことでもしたいかい? 

おっさんの俺と出会って、心底がっかりすればいい。

どん底にたたき落としてやるよ。



兼光さんが連合を抜けてから、3ヶ月近くが経った。

春が来て雪がなくなっても、俺の住む街は冬のまま曇って日差しが少ない。

連合には自動認証の解放と除名で、いろんなやつが来ては去って行った。

最近来たやつらの中では、「ぺるり」さんが定着して来たように思う。

「ぺるり」さんは長期間のブランクがあった人だった。

このゲームによくいる、始めてすぐに放置した人で、初心者同然だった。


ぺるりさんは掲示板でよく質問をする。

主語が「俺」だから、やっぱり俺やギースのようにおっさんなのだろう。

それもこのゲームによくある事だ。

復帰者だからガチャの引きも強い、クエストもよく走る。

…強くならないはずがなかった。


さすがのあんたも彼には危機感を抱いた事だろう。

彼の成長速度はあんた以上だ。

ついこないだまで40万もなかったのに、たったの2週間で俺を抜き去り、

今はあんたの背中を追っている。


ぺるりさんの定着は、連合にとって大きな力となった。

彼にはこの連合にまだない奥義がある。

敵の応援効果を大きく低下させるやつとか、攻撃が必ず敵前衛全員に当たるやつとか。


しかし彼が後衛を希望したため、戦力で俺が前衛に押し出される事になってしまった。

その時後衛の枠は、流れて来た初心者や休眠アカウントで一杯だった。


久しぶりに前衛に入ってみて、俺はその弱さに愕然とした。

まずプレイヤーレベルが低く、HP上限値も低いから立てない。

その上参戦してすぐに攻撃して、敵を動かしてしまう。

あんたやギースはそこのところをよく心得ており、合戦に入ってもすぐに攻撃しない。

敵が動かない限り、ひたすら回復ボタンを連打して、

HP最大値上げをしてから、やっと攻撃を始める。


俺が前衛に押し出されてしまった事は、あんたも気にかけているようで、

ある22時合戦終わりに挨拶をもらった。

ソーシャルゲームにはよくある「挨拶」だが、このゲームではちょっと意味合いが違う。

どちらかと言うと、個人間チャットに近く、

チャットページにも「挨拶」の項目があるくらいだ。


あんたは参戦のお礼から始めて、前に押し出された事を気にしている事を書いていた。

そしてもし後衛に行きたいならば、自分がぺるりさんに話をつける…と。

俺はささやかなプライドを叩きのめしたあんたが憎いし、嫌いですらあるけれど、

あんたは心の優しい、いい人らしいな。

さすが初心者のいち連合員から、盟主にまでのぼり詰めただけある。

普通の連合員相手なら、それも細やかな気遣いでいいさ。

でも俺はだまされない、あんたが嫌いなんだから。


後衛としてのぺるりさんは、なかなかに強かった。

でもあんたほどじゃない。

ぺるりさんも応援を連打しているつもりだろうけど、あんたの鬼連打には負ける。

それに彼にはあの恐ろしい応援補助スキル「教養の極み」がない。


それでもぺるりさんは熱心だし、活動的だ。

新入りとしてはかなり珍しいし、あんた以来の当たりと言える。

連合が彼を可愛がらないはずはなかった。

あんたも盟主として、そんな新入りは可愛いらしい。

掲示板でギースを交えて、3人でちょくちょく会話しているのを目にする。


対する俺は可愛くない連合員だろうな…。

参戦率も高いとは言えない、成長も遅い、そして発言しない。



次の合戦イベントも近づいた、ある22時合戦終わりのことだった。


「あれ? またSランク昇格近くない?」


ここ最近合戦での勝利が続き、

連合が再びSランク昇格に近づいていた。

ギースが発言した。


「イベ前だから、みんな調整してるんだよ」

「調整しますか?」


あんたは聞いた。

しかしもう遅い時間だったのか、答える者はなかった。

あんたの不安をよそに、連合はそれからも勝利を重ねた。

そして週が明けて月曜日の午前4時を迎えた。


夜勤中の俺はログインボーナスのガチャ券を消費するため、ゲームを起動した。

すると、連合ランクの昇格や降格を通知する画面に切り替わった。


“おめでとうございます! 連合がSランクに昇格しました!”


連合昇格を表す松竹梅の画面に、こう書かれてあった。

連合がSランク昇格…!

参戦率もいまひとつな、ついこないだまでラスト奥義に困っていたような、

あの弱小連合「Sakura Breeze」が!

下手すればBランク落ち、良くてAランク止まりのあの「Sakura Breeze」が!

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