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第6話 特殊デッキ

第6話 特殊デッキ


兼光さんが連合を脱退した…。

ただ、これは連合の皆も盟主交代の時点で予測はしていたらしい。

ギースもあんたも慌てる様子はなかった。


12時、いつものようにギースとあんたがインして、回復ボタンを鬼連打し、

HPの上限値をひたすら上げるところから合戦は始まる。

本当なら後衛の俺が、そういうスキルを開幕に使うところだが、

そんなレアなスキルなど、この俺にあるはずがない。

HP上限値上げスキルは、高コストSRを4枚集めて秘技を解放するか、

それを持つSSRを引き当てて、他のカードの継承枠に継承させて数を増やすなど、

とにかく入手までにハードルの高いスキルであった。


俺がインしたのは残り時間15分近くだった。

すぐにギースから板に書き込みが飛んで来る。


「ペルソナ♪」


そんな事している場合じゃないだろ、負けてるじゃないか。


「ペルソナ3☆」


…いや、あんたも立ち上がる前に退却してるじゃないか。

てか、俺は別ゲーじゃない。


俺の後衛用デッキに能力上げスキルは乏しい。

しかもレベルも低いときている。

それでもないよりはましらしい。

なかなか立てないあんたは、いつもより少し遅れて「空爆島津雨」を設置する。

奥義の発動まで、俺がその乏しい上げスキルを使える限り使う。

そして奥義の発動で敵の能力を下げるスキルに切り替える。


あんたはとにかく立ち上がろうと努力を重ねる。

それを足がかりにギースとそのサブアカウントが立ち上がり、大技を連発する。

あんたの大技「鬼島津クロスファイア」だって悪くない。

一斉に立ち上がろうとする敵の数を減らしてくれる、敵の大技発動を潰してくれる。


結局、その合戦はブリーズの勝利で終わった。

その後の合戦は、例の無茶苦茶なマッチングでほとんど勝てず、

イベントはそのまま終わった。

ところが。


「あれ? これって500位近い? ひょっとして過去最高?」


合戦後の掲示板にあんたがふと書き込んだ。

俺はその書き込みに、慌ててイベントの結果発表のページへと飛んだ。

「Sakura Breeze」は519位とあった。

ギースもこの発表を見て、掲示板に書き込んだ。


「過去最高です! 感謝♪」

「うちらがんばった、みんなグッジョブ☆」



そのイベントを境に、あんたはいっそう強くなったように思う。

戦力も俺なんかとっくに超えて、兼光さんに迫ろうとしている。

ガチャの引きも相変わらずいいから、強いスキルだって揃う。

年が明けてから、あんたは課金を始めたと言う。

なんと、それまで全くの無課金だったのだ…!


課金を始めて、あんたのガチャの引きはより強くなった。

武田信玄や上杉謙信、島津義弘など、いわゆる「神カード」を引き当てる事が多かった。

「神カード」には、その名の通りこのゲームでの重要スキルが搭載されてある。

このゲームのガチャは、他のソーシャルゲームよりも価格が高い。

そして当選確率も格段に低い。


重課金者が何十万、何百万とかけても、1枚当たるかどうかわからないカードだ。

あんたの引くカードはそういうカードなのだ。

そんなカードをあんたは簡単に、継承の餌に使ったり、ひどいと売却してしまう。

あんたこないだ真田引いていただろ、あれはどうした。

あのカードは最高峰の前衛攻撃スキルを持っているはずだ。


ブリーズでは基本的にデッキ内容を連合員に公開している。

非公開なやつもいるが、そういうやつは大体初心者か短期の客員だ。

俺は時々こっそりとあんたのデッキを盗み見る。

ギースのデッキも公開されているが、まったく次元が違い過ぎて覗く気にもならない。


あんたのデッキはかなり特殊だった。

まず前衛なら必須の、HP1状態から繰り出す大技がひとつもない。

そしてそれに関連するスキルもない。

代わりにHPがMAX状態で繰り出す大技と、その関連スキルが多めに積まれてある。

それから回復系スキルと、味方の能力上昇効果を持つ計略スキル、

敵の能力を下げる補助スキル、味方の能力を上げる補助…。

これらが多く積んであるのが最大の特徴だった。


つまり前衛の中に後衛がいる、それがあんたのデッキだった。

ブリーズには後衛が少ない。

戦場にあんた一人の時さえある。

あんたはきっとそこを考えてデッキを組んでいるのだろう。


そんな神カードだらけのデッキを持つあんただったけれど、

スキルよりカードの絵の方が大事らしい。


「課金は米沢上杉家のため。てか、上杉家ゲットがこのゲーム唯一にして最大の目的」

「あ〜『鷹山の改革』狙いね」


課金の話題が出た時、あんたはそう書き込んでいた。

このゲームで「米沢上杉家」のSSRは、あのふざけたカードしかない。

あのカードには「鷹山の改革」という、すごい奥義がある。

味方の攻撃が当たってしまう可能性はあるが、

行動に伴う消費ポイントの減少と、補助スキル総立ちは大きい。

それに補助の「困窮之極」だって、常時敵の戦力を削り続けるとかすごい。


「いや、単に絵柄が面白くて好きなだけ」

「おい」


合戦中、勝っている時はギースとものすごいペースで、計略の連携をしながら、

掲示板でいろんな話をする。

早朝だけどあんたも特殊時間勤務者だって事。

12時合戦が終わると寝てしまうので、昼間は活動していない事。

このゲームではなく別ゲーがメインだって事。

九州系大阪人だが、引っ越しが多くて今は横浜に住んでいる事。


最近はギースと二人して、書き込みにハートマークを付け合う、

「ぶりっこプレイ」がお気に入りらしいが、あんたが男か女かはわからないままだ。

たぶんおっさんなんだと思う、それがこのゲームの主な客層だから。

俺が参戦すると、二人してハートマーク付きで俺を呼ぶ。

リア友のギースは、俺がおっさんだって知ってる。

でもあんたは俺を女だと思っている…?


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