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シリアスな空気の中に黒いアイツがいた場合

作者: ゆさじ

ふと思い立って描いた作品です。

よければご覧になってください。

俺は勇者だ。

王都の教会にいる聖女である王女の神託でそう決まったらしいが、正直実感はない。

けれど、俺に力があるなら誰かを守れたらいいなと考えたんだ。

そして俺はまず王都で騎士たちと訓練をしたあと、救国の旅に出た。


俺は旅を続けていたある日

村を襲おうとする一人の魔王の男の前に立ちふさがっていた。

そいつは大柄な男で、赤いマントに豪奢な飾りや宝石を持ち、首や手首には人骨の人背らしきをものをアクセサリーにしたものを身に着けた、見るからに危険な男だ。

「我が名は魔王、たった今からこの村は我の玩具となった。手始めに我が魔法で滅ぼしてくれよう」


言動もやはり悪意と暴虐に満ち満ちていた。

こんなやつをこのまま村に入れるわけにはいかない!

俺には、聖女からもらったこの聖剣がある。

訓練も重ねた。

戦わない理由もないだろう。


「貴様風情にこの私がありがたく出向いたのだ、感謝して死ぬんだな」

「なんだと、貴さ……ッッ!?」


俺はそれを見て会話を思わず中断してしまった。

声を失った

周りの声ももう聞こえない。


ここがどこなのかすらもはやどうでもいいくらいの圧倒的な存在感。



いまということも忘れて

世界から音が消え、色が消える。ただソレだけが俺の目に捉えられる。



「まさかこの戦いの場にて、硬直など、くははっ!臆したのか?勇者よ?」


俺は必死に状況を整理しようとしていた。


だが、あせるばかりでうまく考えられない


こいついったいいつのまにここにッ!?



なんとそこにいたんだ


黒いヤツが!いつのまにか!男の足元にいたんだ!




その姿は言葉にするもおぞましく醜悪。


生きているだけで罪という言葉はこいつのためにあるといっても過言ではない。


特に女性にとっては天敵になりうる。


なぜ、なぜこんな場所に奴が!?


俺はめちゃくちゃ動揺していた。



「おいどこを見ているんだ

そっちにはなにもないぞ!」


いややつらはどこにでもいる


古代文明に存在したといわれる超兵器『カク』でも殺せないというのは、さすがにホラ話でも、そんな話が

ささやかれるほどの生存力

適応力を持った超生命体だ。


腕や手足をつぶしても時に蘇生することもありうるほどに奴らは強くたくましい。


当然

奴らの生存場所は、広い。海や火山意外ならどこにでもいる。

ならばここに奴がいても不思議ではない。

そう考えているあいだに

奴はゆらりとした動きで男の足元に移動していた。




幸い奴は飛んでいない

けれど時間の問題だろう、


ひょこひょこと触覚を揺らしながらえっちらおっちら男の足に乗っかる。


そのまま足元を昇っていき

「おいちょっと視線が下すぎないか?俺の股間を見てもなにもおもしろくなどないだろう?」


やがてあっという間に男の腰にたどり着き、背中に回っていき、飛んだ!


「ッ!?」

早い!

その速度は一瞬視界から消えるほどに超常的。

昆虫生物としての驚くほどの身軽さと力強さを発揮し、我々人間とは違う速度域へ容易に到達する。

凝視していたにもかかわらず視界から奴はあっさり消えた。

凄腕の暗殺者すらここまでの所業をなし得られるのかどうか、

敵の性能は我々人類をはるかに凌駕しているらしい。


俺は深い戦慄を禁じえず、警戒した。


しかし、奴に対する有効な武器がない今


俺は無力だった。


ここには古代兵器であるキラースプレーも、キラー叩きもない


剣はあるが、こんな範囲の狭い武器では百回振っても当たるかどうかわからない。


この場に必要なのは、軽量で攻撃範囲が広い武器だ。

こんな聖剣なまくれでは魔王は倒せても奴は倒せない。


来るな、来るな


大いなる絶望を前におれはいのることしかできなかった。


数秒か、数分


視界から消えた奴はこちらには来ていない。


いつのまにか俺の足元にいることもない様だ。


「ふぅ」

安堵した。

幸い奴は俺の方にはこなかったということだろう。


ひとまず助かった


だが安心してばかりはいられない


奴の行方を捉えておかねば、


俺は急いで周囲を見回した


だが奴はどこにきえた?



「そうだ、会話は人の顔を見て話せ!」


聞いているのか?」




「あ、ああ」


「そうだ、最後の会話となるかもしれないのだからな」


「そんなことはさせない、俺はおまえを倒してこの国を救う!」


会話を続けてしばらく後



そこで俺は気が付いた


男の頭頂部にいつのまにか何やら妙なものがあることに



ひぃっ!?

奴がそこにいた。


嘘だろ!?


あ、頭にのっかってやがる!?





く、くるな!来るんじゃない


「この俺に怯えるか?威勢がいいようでいて、格の違いには敏感か。

やっと自分の身の程を知ったようだなすぐ楽にしてやる」


奴が奴がこっちにやってくる!




幸い奴は男の頭の上にとどまっている。

いまならこのナマクレでも切れるかもしれない


奴らの生命力は侮れない


剣で斬るだけでは生ぬるい


斬ったうえで


跡形もなく焼き尽くさねば


「もはや抵抗する気も失せたか」

来た!


「死ねぇぇぇぇぇぇェェ!?」


「なんだとっ?貴様まだ反撃する気概が残っていたか?」



「ぐうっ!馬鹿なっ!馬鹿なぁぁぁぁ!!」


「死ね!しねぇぇぇ!焼けて死ね、斬られて死ね!死ね、死ね、死ねぇぇぇぇ!!」



いつのまにかそこにはただの肉片のような残骸があった。

「勇者様、魔王は?」


俺はそこで気が付く。

ヤツがいない。


「あ……」

「どうしたんですか?勇者様?」

ふと周囲を見ると俺は気が付いてしまった。

あの黒い触角が村の中に入っていくところに



「赤き焔よ、炎天より来たりて紅蓮の……」

「勇者様!?なにを……」

「離せっ!やつが!まだ奴が生きてるんだ!」


「どういうことだ?勇者様はなぜ村に向かって攻撃魔法など」

「いいえ、きっと勇者様の中ではまだ魔王との激戦が続いているんですわ、」

「もう闘いは終わったのです!しっかりしてください勇者様!」

ふとゆっくり誰かに抱きしめられたような感触がした

なんだこの柔らかな感触は?

「き、君は、いえ、あなたは……姫様!!?」

俺は王都で出会ったその少女の顔に見覚えがあった。


「よくぞ、魔王を倒しました、勇者よ、もう闘いは終わりです、終わったのです」


「違う、奴はまだ」


「いいえ、戦いは終わったのです」


「勇者様はなにを恐れておいでですか?」


「俺が恐れているのは、魔王じゃないんです」


「え?ではなにを……」


「蟲です」


「む、蟲?」


「そうです、俺は蟲が苦手です、中でも黒いあいつは見ただけで幼少期失神してしまうほどに、今は成長して攻撃魔法をぶっ放して殺せる程度になったんですけど」


「ぶ、物騒ですね」

________________________________________


それからあと

魔王を束ねる大魔王がいることを知った俺は、王女とともに各地の魔王を倒す旅にでることになった。





「いや、あなた放置したら世界が滅びるでしょ!」


「はは、そんな蟲ごときで世界を滅ぼす奴なんているわけないでしょ……ん?」

だが、そこに

黒い奴がいたのだ。

かさかさと目にも留まらぬ高速疾走で時折羽で飛びながら真っすぐこちらへ向かってきている。


やばい、あの動きはやばい


もし少しでも俺の体に触れたら俺の精神が破壊されてしまう!


「く、くるなぁぁぁぁぁぁぁ!?」

俺は持てる魔力をすべてソイツにめがけて放とうとした。


「やめてぇぇぇぇぇ、国が亡びるからやめてぇぇぇぇぇぇっ!!」


王女は俺の魔法を妨害するたびにそのたびに俺に抱き付いたり、キスをしてくれる。

こんなけなげな女性が俺なんかのたびに付き合ってくれるなんて俺はなんて幸せ者なんだろう。


おしまい。


読了ありがとうございました。


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