シェーン・"マッドフォーカス"・レンショー(1)
才能が枯渇した? しょせんは一発屋だって?
好き勝手言ってくれちゃって。
「いや、もちろん君と会うのがイヤだってわけじゃないよ? そこは勘違いしないでほしいんだけどね。そういうことじゃなくってさ、ほら」
誰にだって、そういう時期ってのがあるもんさ。世界中を席巻、全米ナンバーワンヒット! 各賞総ナメ、なんて名監督だって、パッとしない時期ってのはあるんだよ。
そこんとこ、連中分かっちゃないんだよな。
「僕ら、もういい大人だろう? のっぴきならない社会の仕組みってものをさ、きちんと理解すべきじゃないのかなあ。僕だって、そうそう授業をすっぽかしてられないんだよ、ねえシェーン……シェーン? 聞いてる?」
そりゃあ、俺だって分かってるよ。前作も、前々作も、パッとしなかったよ。ああそうだよ。認める、確かに。けどだからって、あれが俺の全て、掛け値なしの全力全開なんだって、まったく、誰に分かるっていうんだ?
デビュー作をもう一度見ろ、何度だって見ろと俺は言いたい。連中に。映画史に燦然と名を残すあのタイトルを、見よ! 『暗黒星雲からの使者』!! 監督・脚本シェーン・レンショー、全米ナンバーワンヒット!! 初日だけだったけどな。ナンバーワンには違いない、やれるんだよ俺は、間違いなく。
「シェーン……あー。マッドフォーカス」
「よう、ビッグベア! 元気そうだな、また体重が増えたか?」
「三日前にも会ったじゃないか」
いや。そうだな。自分をごまかすのは、もうよそう。確かにあれは、俺だけの実力じゃなかった。
俺を支えてくれる、気のいい親友たちの心よりの助力があってこそだ。ああ、分かってる。
「はあ……で、今度はどこで詰まってるの?」
「キッドマンとワームガールが一時的に休戦して巨大円盤を迎え撃つシーンなんだが、そんなバカでかい円盤をどうやって撃ち落としたもんかと思って……」
「ちょっちょっちょ、待って。待って……ええ!? ワームガールって、敵だったよね? キッドマンの奥さんと娘を殺しちゃうんだから、それに円盤って? 何星人の円盤? どこから出てきたの?」
「これから考える。イカす映画にはイカすヒロインってやつが必要不可欠だからな、いいだろワームガール。きっと人気出るぜ? 気持ち悪いけど可愛らしい、キモカワイイ! なんつってさ」
「そんな言葉、聞いたこともないよ……えええ、ワームガールがヒロインなの? シェーンそれ、話、全然変わってきちゃうじゃないか……」
「だからお前の力が必要なんだろ? ったく、分かるだろ、そのくらい……ほれ、いつもみたいに頼むぜ。ガンガンやっちゃってくれよ」
鈍くて太ってて、こんな時には実に頼れる、我らが大親友だ。いつだって、俺たちの関係は変わらない。俺がこいつや仲間たちを導いてやる、その代わりにやつらは俺へと、天啓をもたらしてくれる。
ちょっと他じゃあお目にかかれない、最高の閃きってやつを。
「分かったよ、もう。じゃあ……そうだなぁ。まず、キッドマンはさ、長らく娘と二人暮らしってことにしたら? 奥さんが亡くなった直後に、宇宙から来た女の子とロマンスっていうのはちょっと、なんかさ」
「そう? そうかな。そうしちゃうか。娘はどうする?」
「円盤が攻めてきた時に死んじゃうことにしよう。唯一残った肉親も亡くして、絶望してガックリ打ちひしがれてるキッドマンの姿に、ワームガールはこれまでに感じたことのない感情を覚えて戸惑うんだ。遠い宇宙を旅してきて、地球で初めて人を愛することを知って……」
「言うことナシだぜ、ビッグベア」
何せ俺たちは、あの夜を生き延びた。今でも目に浮かぶ……あの光景が、今でも俺たち五人を繋いでる。どんなに遠く離れてたって。
ちょっとやそっとじゃ、切れないのさ。この、絆ってやつはね。




