キラ・キラキルス(1)
何度となく住処を移そうと考えたことはあったけれど、やっぱりここが一番。結局いつも、この町に戻ってきてしまうのよね。第二の故郷ってところかしら、ウィッチウッドは。
「マーロン。ペネロピー・マーロン。聞いてるか? この問題を」
「ああ。はい、先生。今書きます」
思い出の町……なんていうと、ちょっぴり陳腐な響きだけれど。
席を立って黒板へ向かい、この年頃の地球人の子たちが延々と無意味に取り組むような数式を一筆で解くと、いつものように、称賛の声が上がった。
「よろしい、さすがだマーロン。完璧だな」
「ありがとうございます、先生」
こういう時の拍手は、いつもむず痒い。
きらきら光るような目で私を見るクラスメートたちは、私が生体水晶構造を持つ鉱物生命だなんてことは知らないし、収斂発火光線で夜な夜な同胞を焼き殺しているなんてことだって知らない。
良い子ぶりっ子するのが、すっかり当たり前になってしまったわね。
「いつもながら。才女さまは違うな」
ああ……いたわね、ここにも、私を知ってる子たちが。
「黙りなさいリコ、あなたの頭髪にこの気持ちのいい陽光を全部集めて、レゲエミュージシャンのような素敵な巻き毛にしてあげてもいいのよ?」
「……ちょっと冗談を言っただけだろう」
デリカシーが無いんだから、まったく。大きな身体を、しゅんっと縮み込ませる彼を見るのは、いつも愉快だけど。エリオットは……私が親友をやっつけるのを見るのがよほど好きみたいね、可笑しそうに笑っちゃって。
肩をすくめて、手鏡を覗き込む。腰まで届く、プラチナブロンド。今日は前髪を、グリーンとバイオレットのヘアピンで留めてみた。なかなか悪くないと思う。緑がかった青い瞳も、小ぶりな鼻も、ぷっくりとしたピンクの唇も、全部、私のお気に入り。いろいろ試してみたけれど、これが一番、しっくりくるの。
町を歩けば、みんなが私を振り返る。クラスの男の子たちだって、きっとみんな私に恋してる……なんて、ちょっと自意識過剰かしら? でもほら、エリックもボビーもブランドンも、ニックもノアも、みんなみんな、私を見てる。もちろん、だからって私は、彼らに媚びたりなんてしないの。ツンと澄まして、近くて遠いクラスメート。私はみんなの高嶺の花。
そんな少女を演じることが、私には楽しくて……少し、苦しくもある。
最後に鏡の前で偏光迷彩を解いたのは、いつだったかしら。太陽みたいなブロンドの代わりに頭を覆ってるごつごつした結晶体や青ざめた肌を、本当の自分を最後に見たのは、いつだったかしら。
まるで……騙しているかのようで。
「……どうした。大丈夫か、キラ?」
「ペネロピーよ。ありがと、何でもない」
私は、この町が好き。とってもとっても、大好きなの。
分かって。この町に、暮らしていたいのよ。




