エリオット・エバンス・ワーグナー(2)
ボクは合体する。
「準備は。相棒」
「文句なし」
「んがァッ」
ガブさんの口が開いてボクを丸呑みにして、液状化したガブさんがボクを覆っていく間、普段は子犬くらいの大きさしかないのに、何だってあんな大口が開けられるんだろうって、ボクはどうでもいいことをいつも考える。
ガブさんと一緒にいる間だけ、ボクは無敵だ。いつもの棒っきれみたいなひょろひょろと違って、今のボクの脚には筋肉がギチギチに詰まってるし、リコが義足の出力最大、思いっきり蹴っ飛ばしてかち上げたヤツを、電灯の上までジャンプして追いかけることだってできる。こんなふうに、簡単にね。
脚力もだけど、腕が四本あるっていうのも、思ったより便利だ。最初はもちろん戸惑ったけど。今じゃ、一回ずつスパスパ引っかいただけで、ほら。バラバラだ。
トゲトゲの恐竜みたいなエイリアンの身体を引っちぎって、ボクは大口開けてそのカケラを……そういえば、オカルティストの先月号に乗ってたボクらのニックネーム、あれは、ボクはちょっと心外だったな。怪人・黒ワニ男だなんて。
このカッコは絶対、ホホジロザメだよ。
食いちぎった肉と骨をガブさんが身体の中で整形して、ボクは落っこちながら、もう一匹を狙って吐き出す。弾丸は足の甲殻を貫通して地面に食い込んで、敵は芝生の上を転がった。
「……もういいわ。十分。後はわたしが」
着地したところで、ペネロピーが手を上げて言った。途端に、人型でつるつるの殻に覆われた虫みたいなそいつが慌てて、
「やめろ!! お前ら、何なんだ……お前らだって、同じだろうが!! 同じ身の上」
ごぼごぼとくぐもった声で何かを言い切る前に、ペネロピーのアタマからまぶしい光の帯が伸びて、ひとつまばたきしたら、そいつはもう真っ黒焦げの炭になってた。
うーん。楽勝だ。あっけない。
「終わりか? これで? こんなものが?」
「暴れ足りない? まったく、素敵で野蛮なケダモノね。心配しなくても、そのうち嫌っていうほど、そんな瞬間が来るわよ。安心なさい」
「おい、そこまで言うことはないだろう……」
むすっとしたリコがペネロピーにやり込められるのを聞きながら、ガブさんはボクから離れた。ぺ、と骨のカケラをひとつ吐き出してから、
「よお。まさか、楽勝だとか思ってねえよな? 相棒。こんなのは、仕事のうちにすら入らねえ」
「それは、何ていうか。うん。期待が持てるニュースだね」
まあ、ガブさんはそう言うけど……何はともあれ。
「リコ、ペネロピー。お疲れ。ガブさんも」
これがボクら、エイリアン・ビジランテの初仕事。一発目としちゃ、うん。順調な滑り出しじゃない?