ロリー・ゴス(2)
あんっ、の野郎!! ネクのバカ野郎!! ああいうの、やるなッつってんのに!! キルスティンカンペキ縦に割れてんじゃん、メリメリぱっかーんってさァ、頭っからヘソまで真っ二つじゃん! うわ、おまけに中からびゅるびゅるうねうねが束になって飛び出して……ああ、あんなのにぐちゃぐちゃ絡みつかれたら、がっつりトラウマだわ。絶賛遠巻き見物中な今でさえ、あたし、夢に見そうだもん。
まぁ、そーね。エイリアン同士のケンカだか抗争だか、そんなのがどんなもんかだなんて、あたしにゃサッパリ理解不能だ。あいつがやけに嫌われてる理由だって、あたしは知ったこっちゃないし。そりゃああたしらには目的ってやつがあるからね、その前におっ死なれたって、ちょっと困っちゃうけどさ。そのために、あのくらいやんなきゃしょーがないのかもしれないけどさ。
それにあいつ、なるべくあたしにトバッチリが来ないよーにって、一応気ィ使ってるんだなってのは、分かるんだ。今もぬるぬるうねうね戦いながら、真っ二つになったキルスティンの頭の左かたっぽが、あたしをちゃんと見守ってる。どんだけグロかろうがキショかろうが、あたしにも一応、分かっちゃいるんだ。
「く、来るな……来るなぁっ!! なんで、なんでこんな宇宙の辺境で、せっかく逃げてきたってのに、ああ畜生……」
「ああもう分かった面倒くさい、しばらく寝ていてくれ」
「へぶうっ!?」
苦戦するようなこともなくて、ネクはあっさり、短気なエイリアンどもをうねうねでぶん殴ってぶっ飛ばした。
「終わったぞ、カム・カムフラム」
「お、おう。ありがとな、手加減してくれて……おーい、ロリーちゃん、無事かい? ケガないかい?」
はん。まったく。
「えーえー、おかげさんでね、あたしにゃかすり傷ひとつだってありゃしませんことよ。んで、言い訳は?」
「いや、その。悪い! ちゃんと説明したつもりだったんだけどな……やっぱ、なぁ。ネク・ネクルだからなぁ」
「えっなんだ、私か? 私のせいなのか……?」
カム、カムなんちゃら。カメレオンみたいなこいつ、エイリアンは、みるみるうちに大学生くらいの軽そうな兄ちゃんの姿に戻った。ネクもソコソコうまく化けてるほうだとは思うけど、こいつの変身ときたらもう、まるっきり普通の白人だ。ちょっとイケメンなのがまた、何かムカツク。宇宙のギャングってな凶悪ヅラしてるくせに、気取りやがって。
「まぁ、ほら……こいつらのことは、起きたらあらためて紹介するよ。それより、さ、こっちこっち!」
軽い足取りのカムカムの案内で、あたしたちはもう使われてない、何かの工場跡みたいな廃墟のドアをくぐる。なんとなーく、そこらにしみついた、甘ったるいニオイ。あ、看板……『あなたのお腹を、CLIPPERS!』ツブれたチョコ菓子工場に居座ってるわけね。
カムカムがくるっと振り返って、何が楽しいのかこの野郎、へらへら笑いながら、
「ようこそ。我らが、おとめ座超銀河団友の会へ!」
得意げな顔。うーん、ブン殴りたい。
「……ところで、キルスティン? あたしのダチの身体をぱっくり真っ二つにしてくれたことについては、後でゆーっくり、話聞かせてもらうから」
「いいいいいいや、だって仕方なくて、だってほらどうしようもなくて……ご、ごめんなさい。ソーリー……あっ頼むからそれ、やめてくれそれ、怖いんだそれその目……!」