リコ・ガルボア(2)
ファンクションベイを3番まで解放。くそ、失態だ。だからリーダーなんて向いてないと言ったんだ。
「ちょっとエリオット、あなたまさか飛び降りる気……リコ!?」
下は、駐車場か。55……8フィートってところか、よし。
「黙ってろ、舌噛むぞ」
「いやよ、離して……! 離しなさ、ってちょっとこのケダモノあなたどこ触ってバカヘンタイ」
くそっ、重いなこいつは。頭の水晶の分か。うるさくて重い。
しかしまあ、こうやってビルから飛び降りるのも、いい加減に慣れっこだ。ファンクション2をスタンバイ。
「……ィィィやぁぁぁああああああ!!」
エナジーアブソーバ、3、2、1、展開。見たか、タイミングドンピシャ。
「ちゃ……くちが、ランボー、すぎるわよ……まって、こしぬけて」
「先行くぞ」
どうせ走れやしないだろう。いつもでかい口を叩くくせに、肝心な時にこれだ。まあいい、ファンクション1、アークジェット通電開始。0.25秒噴射。違法駐車トラックもひとっ跳びだ。
この鋭角的なフォルムの『足代わり』が完全に馴染んだかと聞かれると、怪しいところではある。どこかむず痒く、時折ひどく疼く……だが結局のところ、俺はこいつを頼るしかないわけだ。幸いにも聞き分けはいい、俺が頭で考えるだけで、こいつはひとまず期待どおりの働きをしてくれる。ファンクション3、ソニックフィン展開維持。
月の中に……見つけた。野郎だ。
「逃すか。クソ野郎」
御大層な翼があっても、あまり高くは飛べないらしい。蹴り落としてやる……ソニックブレード形成、仰角48度。射出。
ぎい、と耳障りな声がして翼が一枚ぶっ飛んで、降着予測地点割り出し、22.96ヤード。
野郎へぬるりと近づく影と、黒い背ビレが見えた。俺はファンクション1を噴射して飛び、影から飛び出した黒ワニ……は気に入らないんだったか。四本腕のサメ男がもう一枚の翼を引きちぎったところへファンクション3、ダメ押しのソニックブレードをぶち込む。
ざまあみろ、だ。真っ二つだ。
意識が途切れる瞬間まで、子どもを食ち散らかした報いを受け続けろ。クソ野郎。
「……っふう! 終わったね。おつかれ、リコ。ガブさんも」
「よう大将。今日はやけに手こずったな?」
ファンクションベイ、全閉鎖。
エリオットは涼しい顔してるし、ガブ・ガブルは……やっぱり、食うのか。そいつ。さすがだよ、まったく。
「すまん。いいとこで、逃がしちまった」
「リコのせいじゃないよ、あれ、ペネロピーは?」
向こうビルへあごをしゃくると、ちょうどキラがよろめきながらにやってきて、
「次に……抱えて飛ぶ時は、ひと言……言いなさい……!!」
「言ったら、お前、逃げるだろう……」
これで、何度目の夜だったか。今夜もどうにか、やり遂げた。足の調子も悪くない。
だが……まだまだ。俺たちはもっと、上手くやるべきだ。可愛そうなガキどもを、運のないジイさんや夜遊び帰りのネエちゃんを、奴ら、二度と狙う気が起きなくなるように。
刻み込むんだ。