演技論
謎の女登場。
明日から5日間
私は仕事でリア充を演じる。
言い換えれば、ある人の彼女を演じるということだ。
私は26年間彼氏はいないが、この仕事はもう10年以上続けている。
私は控えめに言っても美人でもかわいい系でもない。
そんな存在だったら、自力で彼氏を作る。
しかし地味な私にも偽彼女市場では案外需要はある
「カレシ」と名称がつく人がいない日のほうが少ない。
最盛期の19歳の時は365日休みがなかったこともある。
最初はある先輩に頼まれた。
2つ上の変な人。
同じ演劇研究会(舞台での演劇など一度もせずに3年間が終わったが)に所属していた高校3年生。
名前も「はるふみ」となかなか特殊だった
「彼女を演じてくれ。これはいい訓練になる。」
などと言いくるめられて、田舎の山梨までついて行かされた。
弟に自慢したかったらしい。
今、思うと危険(高3の男子など9割ケダモノであるから)な行動であった。
それを感じさせないくらい変な人であったし、2人でいて居心地も悪くなかった。
その旅では奇妙なことや思い出したくない、不運なこと様々起こったが、結果だけ言うと「ばれた」のだ。
失敗した。
負けず嫌いの私は死ぬほど悔しかったし、恥ずかしかった。
(謎の質問攻めをされた。「なんで了承したの?はるふみのことほんとは好きなんじゃないの?…etc)
そんなうぶであった私も、今は人妻を演じることもある。
時が流れるのは早いものだ。
あれから失敗はしていない。
あの失敗からは多くを学んだ。
あの失敗は多大なる恥ずかしさと悔しさを私に与えた。
しかしそこから、一つの「演技論」なるものを私は生み出し、今はそれを生業にしているのであるから、
あのド変態な変人の先輩にも少しばかりの感謝の気持ちと鉄槌を与えたい。
演技論であるが、これについては日々更新していく。
時代の移り変わり、自分の体の変化、心の変化、それににある程度合わせていく。
オーダーメイドで作り替えていく
これは私だけの演技論であり、ほかの方々にとって利用価値があるとはなかなか思わない。
ただ、1つだけ誰にでも当てはまることがある。
それは
「心にうそをつかないこと」
時に私は化粧のギャルやうるさい女も演じる。
正直あいつらは嫌いだし、なりたいと思ったこともない。
けどならなければいけない。
そんな時に大事なのは、その気持ちを消そうとしないこと。
演じるのはギャルのことが嫌いなギャルでも、うるさい人が嫌いなうるさい人で良い。
嫌いなまま、拒否感を残したまま演じる。
それが妙なリアル感を生むのだ。
なぜか。
それは自分のことが100パーセント好きで、心に闇を抱えていない人などいないから。
自分が全力で演じている「偽の自分」への拒否感を隠すことは、完璧な人間像を相手に感じさせ、疑問符を生む。
などと、ごたくを並べたが
理屈などは正直どうでもいいとは私は思っている。
気楽にやること、無理をしないこと。
これ大事だと私は思う。
それの答えが「心にうそをつかないこと」
自分の感情を消すことなく、全力で偽物を演じる
これが10年間で1番大事にしてきたことである。
明日から新しいコミュニティに身を投じるあなたには参考にしてほしい。
まあ、正直この仕事はしんどい。
演技はしんどい。
だがその先に得られるものがあるのなら、これほど簡単な仕事もないと思っている。
まあ長くなったが、これくらいにしときたいと思う。
最後に一言。私もこの演技論に習い、言わせていただきたい。
はるふみさん。
あなたのことがすきでした。
にせものでも彼女になれて幸せでした。
ご結婚おめでとう。
お幸せに。
さようなら
・・・
・・
・
そういうと彼女はマイクを放り投げ、外に出て行った。
友人代表スピーチは終わり、会場は静寂に包まれた。
偽でもいいから彼女ほしいですよね・・・(笑)