転生してしまったけど女だったので、王様の嫁を目指してみた。
見てください!
イズル・セン・レリーナ
レリーナ家当主の娘で第6の王女候補
これが今の俺の名前と身分。
男から女に。
平民から貴族へ。
なんでこんなことになったのか。
わからない。
まあ、いいだろう。
この世界を生きてみよう。
前の世界はくそだったしな。
なんか、この世界には来たことがあるような親しみやすい雰囲気がある。
第二の故郷だと思ってここで生きよう。
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小酒井いずる17歳は3月9日卒業式の前日、屋上から落ちた。
自殺したわけではない。
自分の意志で飛び降りたのでもない。
引き寄せられたのだ。ナニカによって。
時はさかのぼり、卒業式前日の朝、げた箱の中に呼び出しの手紙があった。
不思議な名前の子だ。
式が終わり少し落ち着いた放課後に、期待半分、怖さ半分で屋上に行ってみた。
そこに人は誰もいなかった。
やはり、からかいの手紙か…と肩を落として去ろうとすると足が動かない。
動かない?
違う。
体が浮いている!
宙に浮く
ひっぱられている!!!!
引力とも呼べる不思議な力に対して必死に抵抗し、手でフェンスを掴もうとするもむなしく、
いずるは宙に急スピードで上がり、
落ちた。
最後に見えたのは、桜が舞う青い空だった。
そして小酒井いずるの存在は世界から消滅し、
転生した。
16歳の女の子として。
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周りの様子は好意的だった
こうでなくては異世界生活は。
そこそこ特別な存在でもあった。
王女決定戦1か月前に、レリーナ家待望の女の子が突如帰ってきたのであった。
しかも、生まれた時からこの瞬間まで家族から離れて育っていた子で、血のつながりはあり、正統なる娘であるそうだ。
なんとも不可解な設定だが、不思議な力によって改変されているのだろうと、漫画の知識をフル活用して自分を納得させた。
それからは一瞬だった。
楽しい嫁修行と、身の回りのお世話された。
そして、俺は優勝した。
圧倒的な女子力と気配り。
半引きこもり生活をしていただけあった。
やっぱり異世界って楽勝だな。
そんなことを思っていると、ドアの開く音がする。
「あなたはもう用済みよ。お疲れさま。」
自分とまったく同じ女の声と共ににもう一度発砲音がする。
世界はゆがんでいく。
痛い?
??頭が痛い!!!!!!
必死になり目を開けると、血の赤色と、金色の髪で自分とまったく同じ顔の女が見える。
「いやーこんなにうまくいくとはね。」
だれだ・・
「私は魔法使いエミリア・セン・レリーナ
あなたを呼んだ者よ。」
「あなた、本当に自分があの家の娘として向かい入れられ、優しくされていると思った?
あれは演技よ。
私が洗脳魔法をかけたの。」
こいつは何を言っている?
「あなたの実力で優勝したと思った?
わたしのサポート・・・いえ、他の候補への魔法での妨害よりあなたは優勝しただけなのよ。
操りやすかったわ。」
見下すように、笑みを浮かべている。
「また、何も考えず参加するのだもの。危機感や違和感を感じなかったの?
異世界を楽しんでいた?
バカね。これだから人間はゴミなのよ。
何度も気づかずだまされる。」
全部仕組まれていたのか。
戸惑いの感情が頭を駆け巡る。
「いい表情ね。
種明かしをして絶望の顔見たかったの。
バンパイアにとって、それが最高のごちそうよ。
イ・ズ・ル・クン。
はーこれでこの世界の王子は私のモノ。
王家も。世界も。
あなたの絶望も。
不必要になったアナタは・・・。
フフフ…分かるわね。」
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目を開けたときに見えたのは見慣れた天井だった。
早く起きなさい~
母親の声がする。
なんだ、ありがちな夢か。
疲れていて浅い眠りだと夢を見やすいらしい。
この前誰かがそんなことを言っていたな…などと思いながら、慣れた手つきで今日の用意をする。
さあ、学校へ行こう。
学校について、げた箱を開ける。
手紙が一枚入っている。
開いてみる。
「イズルクンへ
運命的な出会いでした。
あなたの表情に何度もときめきました。
放課後、屋上へ来てください。
あなたのエミリアより」
苦手な異世界ものにチャレンジしてみました。
異世界へ行ってちやほやされたい。
誰もが一回は思いますよね。