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プロローグ
Mademoiselle Black
カーテンの隙間から漏れる真っ黒な日差しで目が覚めた。もう少しだけ寝ていたいと思ったけれど、時計を見上げて、もうすぐ朝の7時だと分かったから、しぶしぶ布団から抜け出してカーテンを開け放った。見上げれば、橙色の空に真っ黒な太陽が輝き、グレーの雲がところどころに浮かんでいた。視線を下に向ければ、目の前の庭の赤い芝生の隅で白い猫が丸くなっていた。いつもと変わらない日常がそこにはあった。部屋の壁は墨塗りしたかのように真っ黒であり、床は透き通るように青白い。非常に不均衡で、しかし奇妙に美しいと思える部屋に、彼女は住んでいた。
襟元に校章のついた制服は、先日彼女が入学したばかりの高校のものである。着替え終わった彼女は鏡の前でくるりと一回転した。まるで深淵を映し出すようなその鏡では、眩いくらいに白い服を着た少女が彼女に合わせて回った。彼女は、時計を確認して、鞄を持って、「いってきます」と誰にともなく呟き、次の瞬間、跡形もなく消えてしまった。彼女が消えた後には、烏の鳴き声一つ聞こえない沈黙だけが残された。