四話 - 初依頼
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さあ、ラディアスの初依頼です。
ギルドマスターの部屋を出て清算依頼したカウンターへと戻った。
「あ、ラディアスさん、清算終了してますよ。ただ....いえ、清算内容をお伝えしますね。
ゴブリンの耳二十二個、ミツクサ草十八本この二点は依頼がありましたので計五件の達成となります。
内訳はゴブリン十匹討伐一件、ゴブリン五匹討伐一件、ミツクサ草五本採取三件の達成です」
どうやらギルドマスターから強制雑談させられている間に俺が探した以外の依頼も見つけて処理してくれたらしい。受付嬢のマリーさんいい仕事をしてくれて感謝です。
「あと、他の素材ですが、ゴブリンの魔石二十二個、ミツクサ草三本、マインドウルフの魔石及び牙と毛皮、ロックベアの魔石及び牙と肉と毛皮、ラージラビットの魔石及び毛皮と肉、依頼も含め合計で金貨1枚と銀貨四十枚、銅貨一枚です。こちらが詳細になります」
詳細を見てみる。お、魔石って高めに買ってもらえるんだな。ふむふむ。
しかし...金貨か。
「結構な額になったんだな」
...ちょっと待て?ええと、確か銀貨百枚が金貨一枚でよかったんだよな?
村では物々交換が基本だから金のやりとりなんかしない。
金貨なんて見たこともねぇよ。
ここは恥を忍んで確認するしかないよな。
「...ええと、銀貨百枚で金貨一枚になるんだよな?」
「...はい、そうです...ご説明しましょうか?」
「...頼む」
微妙な空気が流れたが気にしない。ウォルムの街も物々交換が基本になれば楽なのに。
受付嬢マリーさんの厚意で各硬貨の価値が分かった。
鉄貨×10 =銅貨1
銅貨×10 =銀貨1
銀貨×100 =金貨1
金貨×100 =白金貨1
どうやら銀貨3枚あれば家族が一月暮らせるらしい。もちろん質素倹約が前提だけど。
銀貨が一枚で日本円に換算したらだいたい一万ってとこか?
そうすると今回の稼ぎは百四十万千円!?
街までの道のりで狩ってただけで百四十万か。一週間狩りっぱなしで疲れたけども。
通貨の説明を聞き、なんとなく日本円計算とかしてしまうあたりが俺だよな。
「ありがとう、参考になった」
「あの、本当はマインドウルフやロックベアの討伐依頼もあったんですがランクの関係でご紹介出来ず依頼達成にはならないんです。だから素材の買い取りのみになってます。すみません」
受付嬢マリーさんが申し訳なさそうにしていた。
ノープロブレム、モウマンタイだ。しばらく依頼受けなくたって暮らしていけるぜ。
いや、ランク上げたいし受けるけどな。
「ああ、別にいい。あと、この街でおすすめの宿があったら教えてくれ」
だから、さらっと流しおすすめ宿を聞いた。
「はい、『夕暮れの灯り亭』がおすすめです。料理も美味しいと評判ですよ。ラディアスさんは必要としないでしょうけれど、厩舎もありますので馬車の馬や従魔を休ませる場所もあります」
料理が旨いだと?
さすが受付嬢さん分かってるね。
宿でなにが重要って、寝心地でも立地でもない、料理だ!!
ぜひそこにしましょう。そうしましょう。
「へぇ、料理が旨いのはいいな。そこに行ってみるよ」
「そうですか、でしたらこのギルドからの紹介カードを渡せばほんの少しサービスしてもらえると思います」
受付嬢のマリーさんから紹介カードを受け取り宿に向かうことにした。
「いらっしゃいませー!」
宿に入ると元気よく挨拶をしてきたのは小さな女の子だった。
「...えっと、宿に泊まりたいんだが...」
「一泊朝夕食事付で銀貨一枚と銅貨三枚ですっ!厩舎使ってご飯もあげるなら銀貨2枚です!おきゃくさまカードがあるから記入をお願いしますっ」
「ああ、じゃあとりあえず十日で頼む。あとギルドからの紹介カードを貰って来た」
女の子はギルドからの紹介カードを見ると目をキラキラとさせた。
「お兄ちゃん...じゃなかった、おきゃくさまは冒険者だったんだねっ!あっ!紹介カードがあるなら一泊銀貨一枚になります!十日だと.......お母さーーん!!!」
どうやら十日分の計算が出来なかったらしく母親を呼んだ。
「はいはいなんだい?おや、お客さんだったのね、待たせてしまったかしら?いらっしゃいませ、私は『夕暮れの灯り亭』の女将マーサだよ。宿泊?それとも食事?」
「宿泊だ。対応はこの子がやってくれたから待ってないな。十日分頼む」
“おきゃくさまカード”なるものに記入しつつギルドの紹介カードと共に銀貨を十枚渡す。
すると女将は銀貨を一枚返してきた。
「十日連泊なら銀貨九枚でいいよ。ルルカ、お客さん...ええとラディアスさんを部屋に案内して頂戴。失礼のないようにね」
「はぁい!ラディアスさん、こちらです!」
ルルカから案内された部屋は明るく清潔で、書き物机とテーブル、ベッドなどの必要最低限の家具も備えられている落ち着いた部屋だった。小さな花まで生けてある。
「いい部屋だな。気に入ったよ」
ルルカにそう言うとルルカは満面の笑みで「ありがとうございます」と言って戻っていった。
小さい子の笑顔はどうしてあんなに癒し効果があるのか不思議だ。
ごろりとベッドへ横になる。
「さ、冒険するにしてもいろいろ買い揃えないといけないし、やることが盛りだくさんだな。とりあえずランク上げ頑張ろう...」
一週間ずっと野宿だったため気が休まる時がなかったのもあり、すぐに眠気がやってきたので俺は抗うことなく眠りについた。
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「.......ん?」
差し込む朝日に気づき目が覚めた。
結構早い時間に眠ったはずだったが起きることなく朝になってしまったらしい。
「夕飯食いそびれた...」
軽く身支度を整え階下へ降りるとルルカがちょこまかと配膳をしていた。
「おはようございます!ラディアスお兄ちゃん!!...っ!じゃなかった!ラディアスさんっ」
「おはよう、ルルカ。好きに呼んでいいぞ?」
頭を撫でながらそう言うとルルカは嬉しそうに笑った。
「わぁ!いいの!?ありがとう!今、朝ご飯持ってくるね!」
朝からルルカの笑顔に癒されつつ朝食を終え、冒険者ギルドへ向かおうとしたら女将のマーサから声をかけられた。昨日の夕食を食べ損ねたことに気づいていたらしく昼用にとお弁当を作っておいてくれたようだった。ありがたく受け取りギルドへと向かう。
昨日の昼過ぎとは違い依頼を選ぶ冒険者達でごった返していた。
人混みが苦手な俺は混雑がひと段落する昼頃にもう一度出直そうかと真剣に考えた。
割のいい依頼は朝になくなってしまうので割りのいい依頼は昼にはないが、昨日の清算で思ったより収入が多かった分、どうしても急ぎで稼がなくてはいけないわけでもないからだ。
でも、せっかく来たしな、明日は昼過ぎに来よう...
心に誓い掲示板に貼りだされた依頼を確認していく。
「やっぱり無難なゴブリンでいいか」
依頼書を剥がし、カウンターへと持っていくとそこには昨日受付をしてくれたマリーさんがいた。
「おはよう、この依頼を受けたいんだけど」
「おはようございます。ラディアスさん、Fランクのゴブリン十匹の討伐依頼ですね。これ受付証です。討伐確認部位と共に提出してください」
「分かった」
軽く返事をし、街の外へと向かう。ついでに冒険者カードの作成申告をして銀貨を二枚返却してもらった。懐に余裕ができたとしても貰えるものは貰うのだ。
森に入ったがなかなかゴブリンが現れない。
「おかしいな。もっと遭遇するはずなんだけど...」
ゴブリンは知恵がないので時も場所もタイミングも考えずに森でも草原でも街道でもどこででも出現する。
繁殖力が強いので頻繁に討伐しないとどんどん増えていくのだ。
最近増えてきたとのことで依頼が出ていたらしいのに、数時間歩いても一匹も遭遇しない。
どうしようか迷ったが、とりあえずもう少し奥に行ってゴブリンを発見できないようなら明日にすることにした。
更に森の奥に進んで一時間ほど経った頃、大粒の雨が突然降ってきた。
仕方なく雨宿り出来そうな場所を探す。木の洞や洞窟があれば御の字だ。
雨宿り出来そうなとこはすぐに見つかった。洞窟だ。しかし、明らかに様子がおかしい。
見張りが...立っている?盗賊か?
これはギルドに報告だな。
こっそりと引き返そうと踵を返した時、視界を掠める光景に目を見開いた。
一人の女性が縛り上げられ盗賊に連れてこられたのだ。
口には布が詰められ、目隠しをされている。
自分が街へ戻ってギルドに報告している間に女性がどんな仕打ちを受けるかなんて簡単に想像できた。
盗賊の人数も分からない。強さも分からない。
そんな状態で一人で対応出来るのか?
失敗すれば女性を助けるどころか自分も死ぬんだぞ?
ギルドに報告するのが正しい駆け出し冒険者の選択だってのは分かる。
勇気と無謀は違うんだろ?知ってるよ。
たぶん俺が報告に戻ってもあの女性は殺されはしないだろう。
ただ、心は殺されてしまう。
こうしてる間にも女性は盗賊によって自分達の欲望を満たす道具になっているかもしれない。
あぁ、本当に、自分の身すらまともに守れない力弱い女性にとってなんて過酷な世界なんだろう。
俺はそう思わずにはいられなかった。
気づいたら、俺は洞窟に向かって走り出していた。
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