閑話 - ギルドマスターの日報
ギルドマスターが日々付けている日記のようなものを公開です。
※閑話なので短いです
俺はウォルム冒険者ギルドのギルドマスター、ギルウッドだ。
今日、妙な男が冒険者登録に来ていた。
国が血眼になって探し収集してる稀少魔道具、アイテムボックスを持ち、それを当たり前みたいに使う男だ。
その男はアイテムボックスが稀少アイテムだと知ると驚き、作成が困難であり現在二人しか作れる者がいないと知ると更に驚いている様子だった。
俺は男がアイテムボックスから魔物の素材を出している時から見ていたがかなりの量が収められていたらしく、どんどん出てきた。容量だけみても国宝級だろう。
腹の探りあいは苦手のようで、すぐにぼろが出た。
顔にも出やすく分かりやすい。隠し事ができないタイプだな。
本人は師匠が作ったことにしたいみたいだが俺の質問に対しての答えが早すぎんだよ。
そんな当たり前なこと何聞いてるの?ってツラだった。
師匠が作ったことにしたいんなら少しは迷った素振りとか、「師匠が書いてた手記を紐解いてみます」くらい言えよ。数拍おいてから気づいた様子で「師匠が~」なんてとってつけたように言っても遅せぇよ。真面目な顔が維持できなくなって笑い出しちまったじゃねぇか。
しかし、アイテムボックスを自作できる男が冒険者志望?なんの冗談だ?自分がどれほど国にとって重要人物か分かってるのかね?
あの様子じゃこれっぽっちも分かってないんだろうな。望めば貴族にだって今すぐなれるだろうに。
だが、あの男は貴族に向いていない。素直すぎる。
俺が奴の隠し事を見抜いたことを察したらしく、目に見えてあわあわしていた。
が、すぐに俺に対し隠すことを諦めたようだった。
おい、諦め早すぎねぇか?
豪胆なんだか、ただの馬鹿なんだかよく分かんねぇよ。
世間知らずってのは間違えなさそうだ。
どうやら俺が逃げ道を次々に塞いで隠し事を暴いたことに対してお怒りらしい。
おもしろいくらいにひっかかるからつい楽しくて苛めてしまったからなぁ。
嫌われてしまったようだ。
面白い奴だ。
面と向かって嫌いだと言われたのはいつ以来か、少なくともギルドマスターになってからは記憶にない。
すぐに貴族や国に目をつけられてしまうだろうな。
ヘタな貴族に囲われでもしたら目も当てられんぞ。お先真っ暗だ。
しがない辺境の街のギルドマスターだが、少しくらいは出来ることがあるだろう。
これでも元S級冒険者であらゆる方面の権力者や現役の上位冒険者にはまだ顔が利くんだ。
仕方ないから出来るだけ守ってやるさ。
あいつの、いや、ラディアスのこれからが楽しみだ。
頼むからあんまり派手にやらかしてくれるなよ?
.....無理だな、アイテムボックスの稀少性を分かってなかった時点でラディアスの考える“普通”が他と違うのがよく分かるってもんだ。
さてと、さっそく各方面に根回ししておくか。
せっかく冒険者になったんだ。冒険者の特権である『自由』を満喫させてやるために。
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