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三話 - ギルドマスター登場

初感想を頂けて舞い踊るほど嬉しかったです。にやにやが止まりませんでした。本当にありがとうございます。

ギルドマスター登場です。ラディアス頑張れ。

「あの、だいぶ珍しいですよ。現在作れる魔術師(・・・)は王宮に二人しかおりませんし...迷宮でもそうそうドロップしませんし...」


「王宮に二人?たったそれしか作れる魔法使い(・・・・)がいないのか?この大陸に?嘘だろ?」


あまりの驚きに少し声が大きくなったらしく周りの冒険者の視線が集まる。


「ええ、二人です。もしかして、ラディアスさんはアイテムボックスが...」


「おい、何を騒いでるんだ?マリー、さっさと業務を続けろ。後ろがつかえてるぞ」


壮年の厳つい筋肉なおっさんがふらりと奥からやって来た。

受付嬢はその声を聞きピンと背筋を伸ばす。


「ギ、ギルドマスター!すいません!!」


「あぁ、いい、いい、怒ってるわけじゃねぇから気にすんな。それからそこのなりたて冒険者、アイテムボックスについて知りたいなら教えてやるよ。今ちょうど暇だったからな。ちょっとこっち来いや」


「いや、別に知りたいと思わないから遠慮させてもらう」


ギルドマスターとか、そんな偉いのがふらふらしてるなと言いたい。

見ろ、周りの冒険者も突然のギルドマスター出現にフリーズしてるわ。


「そう言うなって、まぁ、ちょっと来い。その間にマリーが精算しておくからよ」


「ちょ、おい、やめ...」


結局ギルドマスターの部屋へ連れていかれた。


「で、アイテムボックスについて聞きたいんだよな?俺はここのギルドマスターのギルウッドってんだ、色々教えてやるよ」


「...ラディアスだ。...本当に興味ないから、帰っていいか?」


高級そうな調度品に囲まれて落ち着かない俺は早くも帰る気まんまんだった。


「興味はないがその腕輪、アイテムボックスなんだろ?...どうやって手に入れた?」


声を一段低くし、鋭く問われた。ここに連れてこられた本当の理由はそれを聞くためか。

もともと厳ついおっさんだが、ギルドマスターだけあってかなりの迫力だ。


「......」


なんて答えるべきか迷っていると更に畳み掛けられた。


「アイテムボックスってのは便利な魔道具だよなぁ?便利だが、作れる奴は限られてるし、迷宮の下層部ですら中々ドロップしねぇ品だ。今、人の手で作れるアイテムボックスってな、袋状のやつだけで見かけよりは入るなーってくらいなんだぜ」


「へえ...」


冷静に返事を返しつつも俺の頭はパニックしてた。

おい、作れる魔法使いがあんまりいないどころか袋状しか作れないのかよ!仕方ない、迷宮産ってことにしておくか。どこの迷宮とか聞かれても答えられないが忘れたことにすればいいだろう。


「...これは」


「ちなみに迷宮下層でドロップした魔道具は国への報告義務がある。今のところ腕輪型のアイテムボックスなんて報告は聞いたことがねぇ。...さて、もう一度聞こうか、ラディアス、そのアイテムボックスはどうやって手に入れた?」


「...」


どうする!?どうする俺!?

今まで親にすら付与魔法のことは黙っていたのに、もうバレるのか!?今までの俺の苦労は!?

イメージさえ出来れば簡単に作れるアイテムボックスがそんなに貴重な魔道具だったなんて予想もしてなかった。

いろいろ言い訳パターンを考えてみる。拾った...は無理がありすぎる!迷宮で...入ったことねぇし!しかも報告義務違反で捕まるから却下。貰った...誰からだよ!!ダメだ思いつかない。


いや、待てよ?貰ったでいいんじゃないか?要は俺以外の誰かが作ったことにすればいいんだからな。


「...俺の魔法の師匠が作ったものだ」


「ほぅ?お前の師匠の名は?今はどこにいる?」


俺が咄嗟に思いついた設定にギルドマスターが食いついた。

えーと、師匠...誰にするかな、もう架空の人物でいいか。でも、それだと俺の場合自分で作った架空人物の設定とか忘れていつのまにか辻褄が合わなくなったりするんだよなーきっと。


“師匠”の人物設定を考えている間、ギルドマスターはじっとこちらを見つめたまま黙っていた。

考えた結果、本当を交えつつ嘘をつくという俺にとって高度な設定を脳内で纏めていった。


「師匠の名はヨウスケ、もう亡くなっている」


嘘は言ってない。

魔法は独学で覚えた。いわば自分が師匠だ。俺の前世での名前は陽介、だから“ヨウスケ”のことで俺に答えられないことなんかない。本人だから。ギルドマスターよ、なんでも聞いてくれたまえ。そして一番重要なとこ、会わせろとか言われても無理。そう“ヨウスケ”は死んでるからな。


「ふむ、魔法の師匠か。それでお前もアイテムボックスを作れるってのか?」


「...いや、作れない」


作れないったら作れない。

だからそんな期待に満ちた目で見るのはヤメロ。

師匠の件はスルーに近いほどあっさり流された。頑張って考えた師匠設定が...。


「...アイテムボックスか、かつて俺も作ろうとしたことがあってな、まぁ断念したわけなんだが、やっぱりアイテムボックス作成で重要なのは魔力量だよな?」


「魔力量も重要だが、むしろ確たるイメージの方が重要だな」


問われて即答する俺。流れる沈黙。


「.......」


「....と、師匠が言っていた......」


答えてんじゃねぇか!!!俺!!はっきり!しっかり!断定口調で!!!


「...そうか」


クックックと笑うギルドマスター。田舎者なめんじゃねぇよ!

村人全員家族みたいなアットホームな村出身の俺に腹芸なんてそうそう出来るか!


ギルドマスター確信しちゃってるな。

あー、いい笑顔してるぜ。なかなかのイケメンぶりだ。


「...ま、安心しろ、国になんて報告しねぇよ。優秀な冒険者を国になんて獲られたくねぇからな」


「俺は冒険者登録したばかりのランクGだ。優秀かなんて分かるわけないだろ」


「アイテムボックスが作れるってことは【空間魔法】が使えるってこったろ?十分優秀だ」


「だから、俺は作れないって」


悪あがきしてみる。頑張れ俺。


「ああ、師匠が作れたんだよな。そんで、もしかしたら他にも師匠の作品が残ってて見つかるかもしれない。もう一つアイテムボックスが見つかったり...な」


もう完全もろバレだな。

そういうことにしといてやる感がハンパない。

街での金策の一つとしてアイテムボックス作成も考えてたから欲しかったら作ってやるくらい別にいいけどさ、なんなら今この場でちゃちゃっと作れるぜ?

はぁ、こっちも開き直るしかないかー...。


「もし見つかったらギルドで買い取ってくれるのか?」


師匠設定続行。とりあえず当面の生活費が欲しい。

依頼こなして稼ぐつもりだけど、義父さんと義母さんからもらった小遣いはほとんど置いてきたから実は結構カツカツな状況なんだ。


ギルドマスターがニヤリと嗤う。


「もちろん大歓迎だ」


「そうか、見つかったら売りに来るよ。もう帰っていいか?」


「ああ。なかなか楽しかった。また来いよ、今度は茶でも出してやるぞ」


聞きたい事は聞けたからどうやら満足したらしい。やっと解放だ。


「アンタは嫌いだ。なるべく来ないさ」


せめて嫌味くらいは言わせろ。十五年間苦労して隠し続けた事をあっというまに暴かれたんだからな。

ん?もしかしたら俺が隠せてたと思ってただけで何かと鋭い義母(かあ)さんあたりにはバレてたかもしれないなー...



ラディアス、開き直りましたね。でも師匠設定は気に入ったようで続行らしいです。

ご感想、評価などいただけたら幸いです。

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