第3話
「あなた、お風呂が沸いてるわよ。最近お疲れみたいね。温まってゆっくり休んでください。」台所から妻の声が聞こえる。
子供たちは無事に独立して、今は妻と二人暮らし。照れくさくて感謝の言葉など言えやしないが、俺がこうして工場長になることが出来たのも、子供たちが無事に大人になることが出来たのも、全ては妻のおかげだ。家のことはしっかりまかせてられるから、俺も仕事に専念出来るってことだ。まあ、持ちつ持たれつって信頼関係だな。
同じように、工場で働くみんなにも、支えてくれる妻や、生きがいを与えてくれる子供たちなど、守らなければならない家族が存在するのだ。それなのに。。。
最近、事業部長が進めようとしている「工場合理化計画」。合理化計画という名のリストラ、首切り。たしかに、3年前までは不採算部門で会社の足を引っ張ってはいたが、中期経営計画のもと前期は黒字回復。そして今期も黒字見込みではないか。
俺も工場長になって5年。前社長の意思を受け継ぎ、現場の前面に出て、率先して中期計画を実現してきた。工場のみんなも一生懸命頑張ってくれた。やっと軌道に乗り、さあこれから、っていう時に。理不尽な首切りなど、納得なんか出来るわけがない。そして何より、頑張ってくれている工場のみんな。口が悪かったり、不器用だったり、みんながみんな優秀ってわけにはいかないが、不採算部門を黒字化するために、汗水流して一生懸命頑張ってくれている。その結果として、工場の今があるんだ。
工場のためにも、工場で働く人々のためにも、そして工場で働く人々が支えていかなければならない家族のためにも、俺は、この「合理化計画」という名の首切りを、絶対に阻止しなければならない。断固、反対する!!
そんな俺に、事業部長からの呼び出しがかかった。




