第17話
『課長ご栄転おめでとうございま~す。』
『お-。みんなありがと-。』 みんなの酌を受けて泥酔状態の課長が、相変わらずの低く渋い声で応えてくれる。もう何回目の乾杯だろうか。
今日は課長の送別会。で、こじんまりとした居酒屋で3次会のスタート。普段から仲のいい5人での3次会だ。
『課長~、キャバクラのナオミちゃんは、ちゃんと僕に引き継いでくださいよ~。』
こっちも完全に出来上がっているジュンペイがそんなネタで絡んでゆく。
『人事に行ったら、まずはあのイエスの野郎をぶっ飛ばしてくださいよ。マジお願いします。』
主任の先輩も工場長が到底許せないようだ。
『会社の成長は社員なしには語れない。人事とは、社員一人一人がモチベーションを高め、常に上昇志向を持って働ける環境を作り上げることだ。そしてそれが会社の経営戦略達成につながる。今の工場をみると、モチベーションを高めるのが難しい環境だよな。まあいろいろな経営判断の上のことだとは思うが。』
課長が熱燗を空けるスピードは止まらない。
『たしかに新しい工場長を置いた人事が正しかったのかどうかは、会社全体の今後の業績などをみなければわかりませんが、一つの人事がこれだけ社員のやる気を削いでいるという事実だけは、人事にもちゃんと伝えてもらいたいです。』
普段おとなしい先輩もこのことについては譲れないようだ。
『でも課長みたいにちゃんと部下のことを考えてくれる人が人事に行くのは、会社全体としてみれば大きなプラスですよね。課長、期待してますよ。』 ケンタも続く。
『お前らの気持ちは痛いほど分かる。俺にどれだけ力があるかはわからないが、この経験を生かして頑張るつもりだ。お前らもしっかり頑張ってくれよな。』
課長から一人一人に言葉が贈られる。
言う方も言われる方も泥酔状態だが、『ケンタ、お前は人の心がわかる男だ。その心を忘れるなよ。そして絶対に偉くなれよ。』 この言葉は忘れない。
『ジュンペイ、お前にはナオミちゃんはまだ早い。ナオミちゃんを振り向かせるくらい、仕事頑張ってカッコいい男になれよ。』 たぶん、この言葉も忘れない。
こうして思い出話に花を咲かせた。




