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第12話
イエスさん(新しい工場長)の言葉は俺の心に響かない。前の工場長の言葉が懐かしく思い出される。
『いいかケンタ。なんでお前みたいな大卒を工場に配属させるかわかるか?よく考えてみろ?』
工場長には、配属されたばかりの頃にそんなことも言われたっけ。
『モノづくりには、生産技術が大切なんだ。これを使ってくれる人のために、いかに良いものを、いかに早く、いかに安く作れるか、それを考えるのが俺たちプロの仕事だ。モノづくりのプロを育てるには、大学の知識なんか役に立たない。工場で何が起きているか、現場を肌で感じてもらうのがまず第1だ。だから最初は、工場なんだ。プロへの第一歩、しっかり頑張れよ。』
たぶんこの言葉は、自分への激励の言葉だったに違いない。3ヶ月の新人研修を終え、本社や大規模支社に配属される同期がいる一方で、工場勤務を言い渡され、軽く落ち込んでいた自分に対する励ましの言葉だった。
次代を担う若い世代の気持ちを汲み取ってくれて、さりげない激励の言葉をかけてくれる心遣い。その優しさが、3年たった今でも、俺の心に響き続けている。
そうだ、俺は、工場で頑張らなければならないんだ。前に向かって進むしかない。




