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  作者: 東ノ 蜆
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初デート③

その後はあの魚綺麗だねとか、大きな魚だねなど、表面上のまるで距離の開いた会話が続いていた。

デート辞めとけば良かったかなと思いを巡らせる。

その時

「奈央ちゃん!危ない!」

と私を背に彼が立ち塞がった。

突然のことに驚き少し体が跳ねる。

「どうしたんですか」

彼がちょいちょいと前を指す。すると水槽の中の大きなサメが目前まで迫ってきていた。

緊張から一気に脱力し、彼の子供っぽさに苛立ちを覚える。

「ごめんね」

そんな私に彼が言葉を放った。

「おれは奈央ちゃんのこと気になってた。はっきり言うと好きなの。そんな気持ちがあって、デート出来るって浮き足立って、嬉しくて、奈央ちゃんのおれに対する距離感とか考えること忘れちゃってた。ごめん」

サメはスーッとどこか違う方へと泳いでいく。

私はどうだろうと考える。今のことだって、手を繋ぐ問答が無ければ笑えていたんでは無いだろうか。自分が知らぬ間に感情的になっていたと思い当たる。

普段、人間関係に慎重な私には珍しい。

「大丈夫ですよ」

何と言っていいかわからずそう答える。

「ここからもう一度おれ達のデート始めていいかな」

彼が振り返り真剣な眼差しで私を見つめる。その目は不思議な感じがした。悲しくて、憂いていて、儚い。小さな子供が無くしものを必死に探すようなそんな目だった。

はい、と私は反射的にそう答えた。

ありがとうと彼はニコッといつもの笑顔で右手を差し出す。

私も応じて右手を出して握手を交わす。彼の手は微かに震えていた。その時小塚先輩の心にも初めて触れた。そんな気がした。




それからはそれまで通りだった時間が帰ってきた。

イワシの群れやマグロなどの水槽の前では、雰囲気ぶち壊しでお互い魚料理の調理法を熱く語る。

そこで小塚先輩が一人暮らしで自炊もたまにしていることを知った。私は実家暮しで花嫁修業という訳では無いが料理をよく作っている。

他にもイルカショーや、生きた鮫肌を触る体験コーナー等々。

楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

ちなみに夕飯は、不謹慎なような気もするが帰りの道中で海鮮料理のお店で食べた。

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