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  作者: 東ノ 蜆
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初デート②

目的地だったのは県内で有名な水族館だ。

警備員に誘導された駐車スペースに車を止める。

すると彼は、ちょっと待っててねと言い、そそくさと車を降りた。

どうしたのかな、と彼の姿を目で追っていくと私の方のドアを開けて

「到着しましたよ、お姫様」

と乗車する時の執事のような振る舞いをニコニコしながら行った。

「まだやるんですか、それ」

2人で笑い合い、ありがとうございますと一言添えて私は車を降りる。

その瞬間、不思議と緊張感から開放された気がした。

思い返してみると私は父親以外の男性と、車内という空間とはいえ2人きりになるのは初めてだったのだ。

彼の気さくな性格のおかげで、終始車内の雰囲気は楽しく、柔らかかったがそれでもどこか緊張していたらしい。

自然と背筋を伸ばし伸びをする。

ああ、今日はこんなに良い天気だったのか。と開放された私はふと思った。

今頃気付くなんて、私全然余裕無いんだな。

「ずっと車の中だと体凝ってくるよね」

彼も私に合わせて伸びをする。

「あ、今日てこんな良い天気だったんだね」

今頃気付いたよ、と彼がわざとらしく頭を掻いた。

小塚先輩も緊張していたのかな。とどこかホッとしたような、何かおかしいような気がして自然と笑みが零れる。

「私も今気付きましたよ」

私は今日初めて心の底から笑った気がした。




水族館に入ると突然彼が駄々をこね始めた。

「ねー!奈央ちゃん手繋ごうよー!」

「駄目です。恥ずかしいし」

「たぶん僕は君と手を繋ぐために生まれてきたんだ」

正直、少しうざったい。

「まだそんなにお互いのことも知れてないじゃないですか」

「ほら、おれ暗いとこ苦手で怖いからさ」

「嘘つく人は嫌いですよ。小塚先輩てそんなにチャラい人だったんですね」

もう少し言い方はあったのかもしれないが、前にも言ったようにこういうやり取りに私は不慣れだ。

意外なことに彼は否定こそすれど、肯定はしないだろうという言葉の答えにどうだろねと一言呟いて黙ってしまった。

場の空気がなんだか悪くなってくる。

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