第三話 ~異世界の町に入る
町を発見しました。
見つけた町は、木の柵で囲まれている。
町の周りには畑が広がり、農作業をやっている人もちらほらといるようだ。
道は町に続いていて、道の先には簡易な門があり、その脇には門番らしき人影が見える。
門番か……
いきなり捕まるとかないよね。
でも、この世界の身分証明書とか持ってないしなあ。
運転免許証出してもたぶんだめだろうなあ。
でも、ここがどこか聞いてみたいのもあるし、まずは話すだけでもやってみよう。
なんてことを考えて門番のところへ向かってみる。
正直なところ、疲れていたし、どうにでもなるだろうと甘い考えもあったわけで。
「こんにちはー、お仕事お疲れ様です」
社会人で培ったフレンドリーな態度を全面に出しながら門番に話してみる。
「おう、何か用か?」
見た感じ黒髪でアジア系の顔立ちの門番が答えてくれた。
「道に迷ってしまって困っています。ここは何という町でしょうか?」
「そうか、それは大変だったな。この町は、ラフィーナ王国のトリケラだ。どこに行くところだったんだ?」
うむ、まったくわからない国名に町名だ。
とりあえず、話を合わせておこう。
「ありがとうございます。いえ、この町に行くところだったんですよ。無事にたどりつけて幸運でした。町に入らせてもらいたいのですがよろしいでしょうか?」
「では、身分証明書を出してくれ」
やはりか・・・
ここは素直に聞いてみようかと考えていたら門番が続けて話してきた。
「もしかして冒険者の登録にきたのか?だったら臨時の通行書を発行しよう」
冒険者?
なんてファンタジーな単語だ。
でも、ここは話を合わせてみるのが良さそうだと判断して話を進めてみる。
「そうなんですよ。申し訳ありませんが手続きをお願いします」
そのまま、門横の小屋に連れていかれる。
「では、ここに名前を書いてくれ。書いたら、この玉に手を乗せてくれ」
指定された紙を見てみると、ずらっと名前が並んでいる。
スウ、アドルフ、ソロン・・・
なぜにカタカナ?
ここは異世界では?とは思ったが、ここで変なことを言って勘ぐられるのも嫌なので大人しく名前を書く。
「へえ、『リョウ』というのか。珍しい名前だな」
愛想笑いを浮かべてごまかしてみる。
「玉には右手を乗せればいいですか?」
「おう、どっちでもいいぞ」
「乗せました」
「じゃそのまま色が変わるまで待ってくれ」
10秒ほど載せていると、玉の色が青く変わった。
「よし、犯罪歴なしと。じゃこれが臨時の通行書だ。冒険者ギルドで登録が終わったら返しにこいよ」
と、木の板でできた臨時通行所をもらうがいまいち意味がわからない。
不思議そうな顔をしていると、説明してくれた。
「この玉は手を乗せた人の犯罪歴を表すことができる魔道具だ。犯罪歴がなければ青、犯罪歴があれば赤になるんだ。見るのは初めてか?」
「え、ええ。すごいものですね。ん?魔道具?」
「なんだ、魔道具も見るのが初めてか?ずいぶん田舎から来たんだなあ。見たことなくても知ってるとは思うが、魔法が込められた道具だ。これは犯罪探知の魔法が込められた道具だな。こう見えても高価な品らしいぞ」
と馬鹿にされながら、愛想笑いを浮かべていたが、裏ではすごい興奮していた。
さすが異世界!
魔道具、魔法!
ビバ、ファンタジー!
もしかして、自分にも使える?使いたい。使えるはず!
なんて考えながら、町に入ったら魔法についても情報を集めることを心に誓う。
「そうなんですね。色々ありがとうございました。あと、冒険者ギルドの場所を教えてもらえないでしょうか?」
「冒険者ギルドなら、町の中心部に行って、一番大きな建物だ。中心部には門から入ってまっすぐ行けばいいぞ」
門番にお礼を言った後、冒険者の場所も聞いて門をくぐる。
さて、次は冒険者の登録だな。