第二十二話 ~ダンジョンにいこう(1)
ダンジョンに行くための準備
あれからもひたすらディケラの周りで狩りを続けた。
違いはセシリー達がレベル3になったので少しノルマを増やしただけだ。
ちなみにノルマは、コボルトリーダーかゴブリンリーダーが6匹、コボルトかゴブリンが30匹だ。
それ以外は、3日狩りをして1日休むのペースで狩りを続ける。
そういえば、前の世界にいた頃はゲームで序盤でひたすらレベル上げするのが好きだったと思いだす。
町の周りでレベル上げとお金を稼ぎ、敵を倒すのに余裕が出たら次の町に進むというプレイスタイルだった。
今もある意味同じようなやり方だ。
自分の能力が多少チートで魔物は楽に倒せるため、余裕はかなり早い段階で出来ている。
ただし、自分だけでなくセシリー達の命もかかっている分、こちらの世界ではより慎重に行動している。
臆病と言われるくらい安全マージンを多くとることが正しいと考えている。
・・・・・・
「セシリー、そっちに2匹コボルトが行った」
見つけた魔物の集団のうち、自分に攻撃がこなかったコボルト2匹の処理をセシリー達に任せる。
「お任せください。
ロミー、アニー、私は防御に専念するから隙を見て攻撃を」
セシリーが先日購入した硬皮の大盾でコボルト2匹の攻撃を捌きながら指示を出す。
ロミーとアニーは指示通りに攻撃が捌かれて体勢を崩したコボルトの隙を付き攻撃をして攻撃が終わるとセシリーの後ろに下がる。
今度はセシリーが前に出て防御を担当する。
これを数回繰り返すとコボルトは2匹共倒れた。
自分に攻撃がきたコボルトリーダーとコボルトを仕留めた後に彼女達の戦いを見ていたが、コボルト程度あれば数匹いても安定して戦えるようだ。
特にセシリーの防御であればコボルトリーダーでも十分耐えることができる。
そろそろ次のステップに進めそうだ。と考えていると、
「あ……、レベルアップしたと思います」
セシリー達がレベルアップの報告をしてきた。
ディケラの周りで狩りを始めて4カ月、ようやく自分とセシリー達のレベルが目標の5になった。
それに加えて、パーティの連携も格段に良くなったし、ディケラ周りで戦うには十分だろう。
お金もある程度貯まったことだし、ダンジョンでも見に行ってみるか。
残りのノルマを片付けた後、冒険者ギルドに戻りダンジョンについて調べてみる。
攻略本があるわけはないので、カウンターにいた男性職員に相談をしてみる。
「すいません、ダンジョンに行きたいと考えているのですが、ダンジョンについて教えてもらうことは可能でしょうか?」
「わかる範囲でしたらお教えできますよ。どんなことが知りたいですか?」
どうやらギルドである程度は教えてもらえそうだ。
まずは必要だと思う情報を全部聞いてみるか。
「ダンジョンの場所、ダンジョンの構造、マップ、出てくる敵や罠の情報などがあればありがたいです」
「まだ攻略中のダンジョンなので場所や出現する一部の敵の情報しかありません。マップは攻略中のパーティなら持っているかもしれませんが、強力な伝手でもないと買うこともできないと思います」
まあ、そんなものか。
「それはそうですよね。では場所などの情報をいただきたいのですが有料でしょうか?」
「それほど貴重な情報ではないのでお金は必要ありませんよ」
とのことで、ある程度ダンジョンについて教えてもらえた。
どうやらダンジョンはディケラの西のほうにあるらしい。
西に向かう道を道なりに進めば標識があるらしく、その通りに進めばダンジョン入口前の管理棟があるのでそこで手続きをすると入れるそうだ。
それに加えてダンジョンが何なのかも教えてもらえた。
そもそも、ダンジョンとはダンジョンコアが発生した洞窟などのことを指す。
ダンジョンコアが発生する原因は定かではないが、なんらかの原因で魔素が溜まることで発生すると考えられている。
ダンジョンコアが発生すると階層が増えたり迷宮になったりと、元の洞窟などから構造が大きく変化する。
ただし、今までクリアされたダンジョンでは必ず最下層にダンジョンコアがあったため、ダンジョンコアが最下層にあることは定説となっている。
それに加えて、今まで居なかった魔物や罠が定期的に発生するが、それらは下層に行くに従って強い魔物となることがわかっている。
最下層まで行って、ダンジョンコアを持ち出すと新たな魔物や罠が発生しなくなる。
この状態がクリアされたダンジョンと言うらしい。
また、持ち出したダンジョンコアは魔力の塊であるため、国が戦略物資としてかなりの高値で買い上げることになっており実質的にこれがダンジョンのクリア報酬となっている。
金額に関してはダンジョンコアの大きさにより変わるため、一律ではないが最低でも白金貨以上と言われた。
ちなみに、ディケロダンジョン(ディケロ近くのダンジョンこと)は洞窟風のダンジョンとなっており、浅い階層にはゴブリンやスライムなどの出現が確認されている。
さらに未確認だがゴブリンの上位種であるホブゴブリンや更に強いオークなどもいるらしい。
大体、ダンジョンについてはわかった。
これ以上は実際に行ってみないとわからないだろう。
試しに行って、だめそうだったら逃げてみるのが良いだろう。
ただし、何があるかわからないため、武器防具を多少グレードアップしておこう。
ギルド帰りに武器防具屋により、自分の剣を鋼の長剣にして、全員の防具を硬皮製に変えた。
鋼の剣が銀貨50枚、すでに硬皮だったセシリーの盾以外の防具を硬皮にして銀貨85枚。
後は灯や薬類を揃えて準備は整った。
宿屋に戻り、食事の前に明日からのことをセシリー達に話す。
「全員レベルも5になったことだし、明日からダンジョンの探索をしたいと思う」
「防具を良いものに買い替えたのはそういうことだったんですね」
さすがセシリーは理解が早い。
お試しで入ることも理解してもらわないと無理に頑張るかもしれない。
「そうだ。だが、しばらくはダンジョンで戦えるかを試そう。無理だと思ったらすぐに撤退だ」
3人ともそれぞれの態度で了承してくれた。
レベルアップのお祝いでもあるし、明日からの英気を養う意味も込めて今日の食事は豪華にしよう。




