アゲイン3
「へぇー、いい店を知っているね。内装も白を基調にしたいい雰囲気だ。お客さんもたくさん入っている。お薦めはなんですか」
「私はここのカルボナーラが大好きです」
「じゃ、パスタは決まり、分けて食べるから大盛りでいこう。カリカリベーコンと卵の好敵手はどれがいいかな。敢えてトマトソースを選ばないなら僕のピッツア選びは、と。何か苦手なものありますか」
「私はありません」
「じゃ、僕はシンプルなマルゲリータにしようかな、店のこだわりがわかるから。それとミネストローネスープを2つに、きこり風サラダをこれも大盛りで。ワインはハーフボトルでチーズに合う赤ワインの1500円までのものを。これでいいですか」
「私は十分です。わあ、晩御飯作らなくてすむ」
「一人暮らし?」
「実家は東京の町田。狭い公共のアパートに住んでいたから、社会人になってから飛び出したの。兄妹2人と両親が住むには2DKは狭すぎる。いまは世田谷のアパートで女友だちと2人で住んでいるの。ちゃんと部屋は別々です」
「へぇー、偉いな。僕なんて車を持っているから狭いアパートで母親と姉貴と3人で暮らしている。車庫代が24000円もするから車は本当に贅沢だよね。でも、何ものにも束縛されない空間が僕にとって一番大切な時間なんだ。だから、ドライブは行く先も決めていないことが多いんだよ」
「私車の免許はあるけどペーパードライバー。いまだに免許を取ってから一度も路上を走ったことがありません。唯一自信をもっていえる」
「そんなことに自信をもってどうするんだ」
「でも、ないよりいいでしょ」
「花屋さんって車で配達がないの」
「だってお客さんは近所の会社とか、飲食店だからほとんど歩きです。あとは店番が多いです」
「僕は花言葉も知らないし、花の種類なんてチンプンカンプン。値段なんていったら未知だね」
「無知の間違いでしょ」
「いったな、だけど僕の高校時代の友人に、女の子の誕生日に歳の数だけ赤いバラをあげたら、つき合うことに成功したって奴がいたな」
「花をもらってうれしくない女性はいないと思う」
「本当!僕は女性に花束をあげたことが一度もないな、そんなことなら研究しとくんだった。千優さんは男に花をあげたことはある」
「ううん、あげたことはないですね。だって女の子から花をあげたってもらったほうは理解に苦しむだけだと思うから。女性の花に込める思いはとても深遠なんです。言葉では計り知れない」
「へぇー、そういえば彼氏の話を聞きたいな」
「わかりました」