アゲイン2
「怒った顔もかわいいですね」
「なんですって」
「まあまあ、そこまで話が進んじゃったら困るよね。僕は半蔵門の平河町という街を知りたいだけですよ、ちゃんと伝えたはずです。あなたと毎日会うことになるかもしれないのですから」
「えっ」
「だからきょう、あなたに教えてもらったFMクリエイトに面接に行ったんです。僕の職業は雑誌の編集なんです。残念ながらモデルのスカウトではない。だから安心してください、女性を気安く誘うタイプの人間ではありませんから」
「だけどお金は返します」
「お好きなように、でも近所に何かおいしいものを食べさせる店はないですか?僕に奢らせてください。お腹が空きすぎて倒れそうです」
「わかりました、毎日会うのなら変なことをするとは思えないから、一緒に食事をしてもいいです。だけど私はランチでしか食べたことがないからコースでおいしいかは知りません。それでよければおいしいパスタが食べられる店を知っています。でもひとり4000円ぐらいするかもしれません、それでよければ」
「じゃあ、安いワインも飲めそうだ」
「え~、はじめて会う人にお酒を飲ませるのですか」
「飲むのは僕だけでかまいません」
「え~、それもズルい」
「僕にどうしろと?」
「じゃあ、ハーフボトルをたのみましょう」
「わかりました、僕に任せてください」
「ここのすぐ近くにイタリア亭というおいしいパスタを食べさせるお店があります」
「僕はイタめしでも牛めしでもなんでもいい」
「ギュウメシ??」
「まあまあ、とにかく行きましょう」
「そういえば、お互い自己紹介をしていませんでしたね。僕の名前は丸山正儀です。正義の味方に間違えやすいですが、儀はにんべんがつくのがミソです。僕自身はとても気に入っている名前です」
「私の名前は鈴木千優です。数字の千にやさしいと書きます」
「へえー、女の子らしいいい名前ですね、僕としては千といわず兆ぐらいやさしくしてほしいな。でもチョウユウなんてトップクラスの大学生みたいでカッコイイと思うんだけどなー」
「え~、変態。いまごろ優・良・可なんて評価あるんですか」
「そうか、数字かアルファベットだよね。でも、変態はないんじゃない」
「そんなことよりイタリアンが先です。早くたばこを消してください」