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グッドラック

 あれから10数年が過ぎていた。正儀の病状は一進一退だったが転機を迎える。それは2002年10月、大型ショッピングセンター、ハートオンが自宅近くにオープンしたことがきっかけだった。それまで正儀が外出するといったら病院に行くときぐらいである。それが毎日顔を洗い、髭を剃り、シャワーを浴び、髪をセットしてハートオンに行くようになった。これはもの凄い進歩である。特に正儀が気に入ったのは地下1階にあるフードコートだ。ここには毎日家族連れ、社会人、学生、子どもたちが曜日、時間帯によって入れ替わり立ち替わり集まってくる。

 正儀はさまざまな人間を見て、自分の置かれてる立場を考えていた。俺はもう子供のひとりやふたりいてもおかしくない。学生時代の同級生には高校生の子どももいるのだ。自分はなにをやっているんだ、と自問自答した。若いころ夢見た大人にはほど遠い自分の姿が情けなかった。40代は小説家か音楽家になって円熟期を迎えているはずだった。それが病気を理由に言い訳ばかりする人間になってしまった。そうだ結局なにをしてもダメだろうと逃げていた。

 そしていままで乗り越えられない壁もあった。それはこれまで女性を本気で愛することができなかったというジレンマである。正儀はこれまで女性の仕草や態度から気持ちを察知してきっかけを作りさえすれば交際することができた。つまりこれまで「愛してる」と口説いた経験がない。つまりなにもいわなくとも女の子がその気になってくれた。つまりイニシアティブは女性であって正儀にはなかったのである。若いころはこれでもよかった。自分が好感をもっていた女性と交際できたからである。だがこれからはどうしても結婚を考えて女性とつき合うようになる。自ずと選び方も変わってくる。愛って不思議だ、と正儀は思う。はじめは顔とかスタイルからはいり、性格とか考え方が重要になり、一生寄り添えそうな人を選ばなければならない。子どもというプロセスもとても重要だ。彼女と俺の間にはどんな子どもが生まれるか、こんなことも考えなければいけないのかもしれない。正儀は自分が素直に愛してる、といえる女性が現れることを期待できる男になること、そのスタートラインに立てる日を心から祈った。

今年に入って虫垂炎と腹膜炎を併発して入院、そして今回はパソコンとウルトラWIFIの故障で入稿が遅れたことをお詫びします。4万字を超えたため愛してるは完結です。次回また「小説家になろう」で逢えたら嬉しいです。

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