表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/45

トラップ1

 そして2週間がたった。正儀はキャプタルサービスで仕事をしていた。だが、新田と立野とバーボンを酌み交わしてからどうも様子がおかしい。なにがおかしいかというと誰かに後をつけまわされている感じがするのである。それは電車に乗ってもバスに乗っても感じるし、歩いていても遠くから俺に聞こえるように話し声がしているのである。そこで俺は何度も振り返った。だけどそのような人物はいつも見当たらなかった。さらに寝つきが悪くなっていた。普段は布団に入ったら5分か10分で眠れるのに、1時間とか2時間も眠れない日が続いていた。結局3,4時間しか眠れない。そして睡眠不足になり仕事に集中できなくなってきているのであった。自分の躰になにか異変が感じられる。いままで1日や2日徹夜したことがあるがこんな経験をしたことがない。いつも自分の意思通り躰が反応していた。逆境に強いはずの肉体がもろく(きし)みはじめているのであった。加えてとても疲れやすくなっている。ましてやキャプタルガイドは数字と番組タイトル中心であり、文章を読むという作業でないため、単なる照らし合わせだけだから間違いを見過ごしやすい。特に校正という作業は集中力がすべてである。いまの状態ではミスを連発するであろう。正儀は思い切って白石に少し休みをもらおうかと考えていた。どっちみちいまの状態では望みどおりの編集作業なんてできやしない。

 「白石さん2,3日休みをもらえませんか」と正儀がいうと白石は、

 「どうした躰の具合でも悪いのか」の返答に正儀は、

 「はい、最近よく眠れないのです。情報提供者に送る原稿の校正が思うようにできません。このままだと中途半端な仕事しかできませんし、いい機会だから一度精密検査をしようかと思っているんです」すると白石は、

 「いま仕事を抜けられたらちょっと困るな。校正が終わる今週末まで何とか頑張ってくれねぇか。そしたらすこし手があくから」

 「はい、わかりました。やれるだけやってみます」と正儀は答えた。

 その夜、正儀は事態が一変した。それはまったく眠れなくなってしまったからだ。なにか巨大な敵がいまにも牙をむきそうな予感がしていた。なぜそういうふうに考えるのかというと、最初は遠くからしか聞こえていなかった話し声が、いまは自分の頭の中で聞こえている。聞きたくないと耳を塞いでもその声は鮮明に聞こえる。この声は聴覚を超えているのだ。人間に耳以外で音を聞き分けられる器官があるだろうか。しかもその声は大きいのに他の人間にはまったく聞こえないのである。この状況を精神科の医者にいってもきっと相手にされないだろう。正儀は仕方なく会社を1日休む決心をしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ