ファースト・インプレッション3
「右側のビルの2階だったな。FMクリエイトはと……、あっ、あった」
結構綺麗な建物だな。エレベーターがあるが階段で行こう。しかし緊張するな、とにかく扉を開けよう。
「すみません、きょう2時から面接予定の丸山です」
「はい、お待ちしていました、こちらへどうぞ」
「ありがとうございます、報国新聞社が近いんですね、私は芸能ニュースを配信する記者もやった経験があるのですが建物を見るのは初めてです。ここでは報国新聞社と仕事のつき合いがあるのですか?」
「はい、たまにフロッピーに記事を入力することもあります」
「フロッピーに入力?なんですか、それは」
「パソコンを使ったことはないのですか?うちでは必ず必要になるのですよ。まあ焦らなくてもいいです。覚えるのはそんなに難しいことではありません。ただうちのオペレーターの入力スピードと正確さはピカイチです。あなたもうちに入れば必ず身につきます」
「はあ、入れればいいのですが」
「こちらでお待ちください、いま人事部長をお連れします」
わおー、いい女だな。秘書という感じじゃないし、服飾雑誌の編集者ってとこか、まあいい。女性がたくさんいる会社に入ったことがなかったからドキドキするな。この会社に入れれば楽しいだろうな。いけない妄想は捨てよう、面接に集中しないと。
「失礼します、人事部長の加藤です。はじめまして」
「はじめまして、丸山です。よろしくお願いします」
「さっそくですが、わが社は『FMピュア』のFM番組表と編集が主な仕事です。
その他はタウン誌、ニューメディアの情報誌、単行本などがあります。
これからわが社も本の編集に力を入れようというビジョンを持っています。
オペレーターはもうよそと比べることができない水準に達しています。
だからあなたにコンピューター入力してくれなどということはありませんから安心してください。だけどこれからはコンピューターの時代になると思いますから覚えたほうがいい。必ず役立ちますから」
「私もこれからはコンピューターの時代になると思います。入れればぜひ身につけたい。だけど、私はいままで音楽業界の雑誌の編集に携わってきました。だから、『FMピュア』の記事の特集やさまざまな形でアーティストをブッキングできますし、いろんな企画立案が可能です。必ずお役にたてる日が来る、そんな確信があります」
「わかりました、今回は面接の人数も多いので結果を報告できるまで1週間かかります。申し訳ありませんがそれまで待っていただきたい。
あなたのような即戦力の人材が必要ですが、給料を多く払えない現状があります。そこは若い会社の可能性を信じていただきたい。このあたりでよろしいでしょうか」
「わかりました、お電話をお待ちしております。ありがとうございました」
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