タイブレーク1
この日正儀はFMクリエイト本社の来客用のソファに座って馬場社長が出社するのを待っていた。社員たちはみんな揃っているようだった。
するとひとり女性が近づいてきた。
「おはようございます、はじめまして立野美穂です。コーヒーをお持ちしましょうか」
「本当ですか、それじゃおことばに甘えていただきます。僕は今度入った丸山正儀です」
「いままでどんな会社にいたんですか」
「小さな出版社みたいなところです」
「新田さんがおもしろい人だっていっていましたよ」
「子ども扱いされました」
「えー、話すことに筋が通っているって関心していましたよ、それにかわいいって」
「もうそこが一人前の男として扱っていない証拠です」
「えー、メチャクチャタイプといって喜んでいましたよ」
「きっと、彼女にとっておもちゃと一緒でしょうね」
「おいくつですか」
「僕ですか、26です」
「じゃあ、私とピッタリ、24です」
「あまり本社の女性としゃべると白石さんに怒られるので」
「なぜですか」
「おまえが一番いい女とつき合いかねない、というのが心配事みたいで」
「えー、一番いい女って誰ですか」
「僕に聞かれても、たぶんあなたのことじゃないですか」
「えー、おだてるのがお上手ですね」
「素直な気持ちです」
「真剣に受け止めてもいいのですか」
「かまいません」
「わぁー、うれしい」