スケジュール2
「こんにちは、千優ちゃん。合計額はできてる」
「はい、1本120円でトータル36万円です」
「それは税込みで、配送費も込みでいいんだね」
「いいえ、配送費は別です。全国30か所となると結構かかりますから」
「千優ちゃんが行くわけないよね」
「まさか、業者さんにお願いします」
「わかった、予算的にも問題はない。あとはこのキャンペーンをどうやって成功させるかが残された課題だ。このキャンペーンはテレビ、ラジオ、紙媒体、レコード会社、そしてプロダクションが参加することになったからかなり大々的になる。千優ちゃんもいまの大衆文化を作っているんだ、という気持ちで参加してくれたら僕はうれしいな。そして30人の男性の思いが意中の女性に伝わったらこれ以上の幸せはない。そうなったら良子も喜ぶだろう。そして初登場1位になったら願ったり叶ったりだ」
「雑誌の編集はそんなことまでやるんですか」
「そうだね、僕らの仕事は本だけ作ればいいというものではない。ニーズがあればラジオの台本を書いたり、広告のコピーを考えたり、作詞をしたりと、やれといわれたらなんでもやる。だからつねにアンテナをはって、自分からいろんな場所へ行く。どこにチャンスがあるかわからないからね。そしてチャンスを掴んだらみんなの期待に応えることが大切なんだ。イメージを形にすることは難しいが、成功したときの気分は最高さ。これは僕らしか味わうことができない。たとえば千優ちゃんが今回参加して入江良子が初登場1位になったら、千優ちゃんの仕事も必ず1位の礎になっているんだ。人間なんてひとりではたいしたことはできないけど、ひとつの目的に向かって集まったときすばらしいパワーになる。この大波を制する快感は一度味わったら忘れることができない。僕の生きてる証しといってもいいほど価値があるものなんだ」
「正儀はすばらしい仕事をしているんですね」