ファースト・インプレッション1
さて、え~ときょうの面接先はFMクリエイトだったな、半蔵門線の終点か。
まあ通うには1時間以内だし、FMって会社名だから音楽に関係する仕事だろう。
求人広告には編集者急募とあったが、編集なんて会社によって月とスッポンの違いがあるから気をつけないといけない。
俺は面倒な人間関係は作りたくないし、まして力関係でつき合いかたを変えるなんてやり方はごめんだ。
いいものはいい、悪いものは悪いといえる人間関係が望ましい。
確かにレコード会社から広告をもらって、本文で「あの曲は最悪だ」なんて書けるはずがない。
それでもレコード会社の宣伝マンにはいいたいことをいう。
彼らの制作部のコンセプトは充分聞くし、ヒットの狙い方も吟味する。
だが、音楽で1番大切なことは、多くの人に意識させることだ。
どれだけ多くの人の心に印象づけるかが鍵なのだ、他には何もいらない。
だから、大切なのはくどい説明より、インスピレーションだ。
音楽雑誌に必要なものはこの直感を読者に与えることなのだ。
音楽を言葉で並べて説明することではない。これが俺の大切にしてきたことだ。
雑誌の編集なんてただでさえ忙しいのに、さらにサンプル盤を聞いたり、毎晩コンサートに行かなければならない。
まあ、マスコミを集めるのはレコード会社の宣伝部やプロダクションの人間の仕事だから見に行ってやりたいが、10日間連続とか、ひどいときは30日連続なんてことがある。
演歌からポップス、ロック、クラシックなどジャンルの違うコンサートが続くとだんだん気が滅入ってくる。
俺はスペードのエースじゃない。コンサートの内容を読者に伝えるという指名は俺にはある。
だが、興味の薄いコンサートを細部まで分析するのはすごくしんどい。
集中力が持続できないからだ。その結果、すいません、今回ページがなくて5行しかないから勘弁、といって逃げるのだ。
ひどい、最低、なんとでもいえ、俺は何十日もまともな夕食を食べてないのだ。家に帰っても風呂に入って寝るだけだ。
おっといけない、これから面接に行くとこだった。昔の編集の話をしてもしょうがない。え~と平河町3丁目押尾ビルは……。
この辺だよな。2階は~看板がないかな?3-15-2は~、ここは12-1か、ということは進行方向右だな。
人に聞いてみるか。あっ花屋見っけ。さっそく聞いてみよう。