コンタクト2
「こんにちは、はじめまして今度入った丸山です」
「こんにちは、オペレーターの新田です、どうしたのですか」
「はい!このフロッピーに入っているデーターをプリントアウトしてほしいんです」
「あっ、そんなことおやすい御用よ、入っているデーター全部」
「はい」
「コンピューターは全然知らないの」
「はい、いままで原稿用紙とペンと辞書だけが僕の商売道具でした」
「へぇー、明治の文豪みたいね」
「あそこまでスレちゃいません、それにあれほど高尚じゃない」
「へぇー、どんなジャンルの原稿を書いていたの」
「音楽関係です」
「それでウチにきたんだ」
「はい」
「でも、ここは『FMピュア』の番組表がメインなのよ。それに番組表は地方によって放送局が違うから同じ号で6冊作らなければならないの」
「へぇー、それは大変だ。入力スピードも大切だが、校正の責任は重大だ。番組の内容なんてそんなに早く決まるものではないでしょう」
「そうね、それとスピード、正確さ、量、みんな求められるのよ」
「それを隔週か、僕には無理だな。考える暇がないんだ」
「そこが一番問題かもね。私たちは考えない、いかに正確に入力するかが大事なの」
「緊張感を持続するのは大変ですよね、僕の場合ウルトラマンより短いから」
「じゃあ、カップヌードル以下ね」
「はい、お恥ずかしい話ですが」
「素直なんだ、いまどき珍しい」
「嘘ついてもすぐばれるし」
「だけど、男って見栄を張る人が多いのに」
「メッキはメッキ、金や銀にはなれないわけで、僕はメッキで勝負します」
「勝負になる?」
「金や銀の基準で戦うのではなく、メッキの基準で戦う必要があります」
「それはどういうこと」