コンタクト1
FMクリエイトの話をしよう。極東通信社と持ち株形式をとり、資本金は互いに出しあい1億円。隔週発行している極東通信社の『FMピュア』誌のFM番組表と記事および構成、さらに本文の校正も引き受けている。社員数約40人。そのうちオペレーター約15人、スタッフは多いとき50人を超える。そのほかの仕事内容としてイレギュラーで年鑑、単行本などの編集。正儀が配属された編集部門のスタッフは約10人。常に仕事があるわけではないが、忙しいときはひとり数冊の本を担当する。営業は主に社長の馬場氏、部長職2人が担当。収益の半分以上は『FMピュア』誌による。就業時間は10;00から18:00とし、遅刻3回で罰金制。一人ひとりの実力が必要とされ、ひとつの仕事を請け負い仕上げることで実績を作り、仕事を継続することで利益を生む。社員の平均年齢23,6歳。これからの会社だといえる。正儀のは記者時代の平均月収は20万円以上だが、FMはその7割に達しない。はっきりいてバカ。この会社から正儀の運命は大きく変わってしまう。
「おい、新人。このフロッピーに入っているガイドブック用のデータを本社のオペレーターにプリントアウトしてもらってきてくれねーか」
「はい、プリントアウトで通じるのですか」
「それで十分よ。だがデータの量が多いから少し時間がかかるかもな。いいか気安く本社の女に手をだすなよ。これは忠告だ」
「僕はそんなにスケコマシに見えます」
「いや、誰だってどんな新人か興味あるだろ」
「新人が自己紹介しちゃいけないんですか」
「ダメ、おまえはコンピューターの前で待ってりゃいいの」
「なぜですか」
「おまえは本社の女の怖さを知らないからな」
「へぇー、いい女で怖いんですか。そのうえ仕事ができる。白石さん、へんなイメージ作っていませんか」
「なにいってる、俺のこころは純白よ」
「えー、その顔でよくヌケヌケと」
「とにかく、おまえは新入社員歓迎コンパまでベールで隠しておけ。これは上司命令、わかったな」
「よくわからないけど、わかりました。無駄口はたたくなと、そして仲良くなるなということですね」
「そういうこと、さすがに頭の回転が速いな」
「褒めていただいてありがとうございます。でも僕は人なつっこいのが取り柄なんですけど」
「封印」
「あっ、はい行ってきます」