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FIRE6 一般人と無能力者

月2の投稿、12月分はこれで終わりです。

麻衣が目を覚ますと、竜騎の姿が見えなかった。

布団から出て扉を開けると、物音が聞こえた。

その音は、竜騎の母親の部屋の隣、鵬斗の部屋からだった。

音を立てないように、ゆっくりと扉を開けた。

そこには、竜騎が居た。

質素な部屋の窓際には、大きな作業台があり、竜騎はそこに向かっていた。

麻衣は声を掛けようとしたが、竜騎の持っている物を見て、言葉を飲み込んだ。

竜騎が持っていたのは、SIG・P230という拳銃、それと札束だった。

目の前の状況に呆然としていると、竜騎がふと麻衣の方を見た。

「・・・麻衣、どうしたんだ?」

そう言いつつ、竜騎は手に持っていた物を引き出しにしまった。

「どうした?麻衣、そろそろ帰らなくて良いのか?」

竜騎はとても優しく、麻衣に微笑みかけた、何かを隠すように。

「・・・・したの」

「?、何だって?」

竜騎は表情を変えずに、聞き返した。

「どうしたの?」

「?どうしたって、何がだ?」

「銃とお金」

麻衣は重々しくその口を開いた、その言葉を聞いた瞬間に竜騎の表情が曇った。

「一体何に使うの?」

「・・・・見ていたのか・・・・・今の」

「う、うん、それで何に使うの?銃とお金」

竜騎は目を逸らした。

「ねえ、まさか復讐でもするの?駄目だよ、人を死なせちゃ」

「麻衣、この銃は友達にあげるんだ、金は・・・知らないほうがいい」

そういうと、竜騎は引き出しからSIG・P230と金をバックに入れて、足早に階段を下りていった。

麻衣がリビングに向かうと、竜騎は既に朝食を食べていた。

「ねえ、竜騎、友達って・・・特校の?」

「あぁ、無能力者だ。俺の一番信用できる奴だ。親友と言ってもいい、あぁそれとアイツも元気だよ」

そう、麻衣は呟き、そしてまた質問した。

「ねぇ、その人なんかに銃を渡して、一体何をするつもりなの」

「・・・・・・」

「答えてよ、竜騎!」

「ご馳走様」

竜騎は食器を片付けて、洗面所に向かった。

麻衣はそれを追いかけて行った、洗面所では竜騎が歯磨きをしていた。

しかし麻衣は何かを聞く訳でもなく、唯呆然と立ち尽くしていた。

竜騎はその脇をさっとすり抜けて、玄関に向かい外に出て行った。

麻衣はたった一人残された、その目にはとてつもない悲しみが表れていた。




                       

            


 




竜騎は無能力者通行禁止区域を自転車で走っていた。

警備員が竜騎に気が付き停止させようとする、しかし竜騎はぶつかるような勢いで走り、手前で止まった。

「おい!貴様、無能力者だな!逮捕する!」

そう言って、警備員が竜騎に近づいた。

竜騎はハンドルを強く握りしめ、警備員を蹴り飛ばした。

「どうして、そんなに簡単に人が殺せる!」

そう叫んで、竜騎は走り出した。

綺麗に整備された一般道路、路地裏への入り口、汚くゴミだらけの無能力者専用道路。

それぞれを見て、竜騎は思った。


一般市民と無能力者。


しかし、どちらとも同じ人種、同じ民族、同じ人間。


なのになぜここまで差別され、迫害され続けなければならないのだろう。


三年前までは、何も無い平和な、平和な日常があったのに、どうして俺たちだけ、どうしてなんだ?


「フッ・・・」

竜騎は微かに微笑んだ、変えなければいけない、この仕組みを、この社会を、この国を、俺が。

誰かがやってくれると思ったら大間違いだ、自分で行動しなければ何かを変える事なんて不可能だ。

鵬斗父さんだって、間違いには自分で指摘し、自分で行動した。

だから、俺もやるんだ、やらなければいけないんだ。

あの日から・・・、二年前のあの日から、俺はずっと思ってきた。

しかし、あの頃の俺にはそれを成し遂げるだけの力が無かった。

だが、今なら出来る、成し遂げるだけの力を手に入れてしまった。

それなら、やるしかない、成功しようが失敗しようが歴史に残るだけでも良い。

それでたくさんの人に、俺たち無能力者の考えを知ってくれれば良い。

そうすれば、何時の日かこの社会の間違いに気付き、指摘してくれる人が増えれば、それでいい。


やらなければ・・・・・鵬斗父さんに代わって。

そして、あいつに・・・麻衣に、平和な世界を見せてやるために。



俺が・・・・・俺が!!

次回「FIRE7 行動」

お楽しみに!

では、又来年!

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