FIRE5 夢
投稿だけども、ストックがあるから、安心だ~
午後十時、竜騎は自室のベットに腰を掛けていた。
あの後、銃声を聞きつけた近所の人が、警察に通報した。
竜騎は無能力者だったので、警察に目を付けられるのは不味い、だからホームレスを棄てて逃げた。
「クソッ!」
竜騎は悪態をついた、それと同時に部屋の扉が叩かれた。
「入っていいぞ」
そう言うと、扉が開かれ、麻衣が入ってきた。
麻衣は竜騎の家に来ると、大抵泊まっていた。
麻衣は少し様子が変で、下を向いて俯いていた。
「どうした?麻衣」
竜騎がそう呼びかけた。
「えっと・・・あの・・だ・大丈夫かな~?って」
その笑顔を見て、竜騎は気付いた。
その笑顔が、偽物の笑顔と言うことを。
だが、竜騎はその事に触れずに、尋ねた。
「何がだ?」
「さっきの警察って、竜騎が原因なんでしょ?」
「・・・・あぁ」
少し間を置いて、竜騎は答えた。
「ホームレスのおじさんは?」
「・・・・・くれ」
「えっ?」
竜騎が何かを呟いたが、聞こえずに聞き返した。
「聞かないでくれ・・・」
竜騎の心の中は、ものすごく複雑で、なによりボロボロだった。
「分かった、ごめんね、竜騎」
「・・・あぁ」
竜騎は寂しげに、そう答えた。
「じゃあ、私もう寝るね」
麻衣はそういって扉を閉めようとした。
「おやすみなさい、竜騎」
扉が静かに閉められた。
「あぁ・・・やすみ・・・」
竜騎は電気を消して、ベットに横たわった。
そして今日あった事を思い返してみた。
朝、ホームレスのおじさん達と話しをした事。
教師に殴られそうになった事。
何時もとまったく同じ生活・・・・生徒が仕掛けた罠を回避した事。
和良とチェスをした事、教師に父親の存在を知らせたこと。
父親、多賀鵬斗。
ホームレスのおじさん達が殺されたと聞いて、公園で叫んだこと。
そして、目の前でおじさんが死んだ事。
これは全て、今日一日であった事。
「すまない・・・おじさん・・・」
竜騎は押しつぶされたような声を出した。
そして、また涙が流れた。
ふと竜騎はカレンダーを見た、日にちは六月九日。
「あの日まで、あと一日か」
そう呟くと、竜騎は静かに目を閉じて、眠りに落ちた。
竜騎は夢を見た、それは懐かしい思い出の夢。
そして、竜騎の運命を変える思い出の日。
あの・・・あの六月十日の出来事の夢を。
新西暦1573年、法律改正が成されてから一年が経った。
そのころは、まだ緩く、何時もと変わらない日を送っていた。
竜騎の父親は、法律改正に異を唱え、デモ活動をしていた。
母親は、普通に仕事に行っていた。
竜騎はその日、何時ものように友達と皆で下校していた。
下校の途中に、パトカーや救急車のサイレンが鳴り響いていた。
竜騎は火事か何かだと思い、気にも留めなかった。
その時、警察の車両が竜騎達の横に止まり、声を掛けてきた。
「君達!すぐに家に帰りなさい!」
「えっ、何かあったんですか?」
竜騎は警察官に質問した。
「今、街でデモ活動をしていた総勢420人が暴徒化したんだ」
「暴徒化って?」
「市民が武装して暴れているんだ、直にここも荒れるだろう」
「それは、どの辺りで起きたんですか?」
「第二相模原市辺りだ」
「なんだって!!」
竜騎は声を張り上げた、なぜなら竜騎の祖父母は、そこに住んでいたからだ。
「じゃあ、お巡りさん!『木漏れ日園』という、老人ホームまで乗せて行ってください!」
「えぇ!?だめだ、あそこは特に危険な・・・」
「それでも、行きたい!行かなきゃだめなんだ!」
竜騎は叫んで訴えた、警察官は竜騎のあまりにも必死な願いに負けた。
「いいだろう・・・乗りなさい。その代わり、危なくなったら直ぐに引き返すぞ」
「えっ?あ、ありがとうございます!」
そう言うと、竜騎は直ぐにパトカーに乗り込んだ、竜騎の祖父母は彼にとって特別な存在だった。
何故かというと、竜騎は幼い頃から、祖父母の家で育った。
竜騎の母親は仕事で何時も居なかった、それに父親も日本のあらゆる政策の問題を指摘していた。
竜騎の世話は何時も、祖父母の役目だった。
竜騎にとっての祖父母は、親のような存在だったのだ。
だから、竜騎はここまで必死だったのだ。
「よし、ここから第二相模市だ。気をつけろ!」
「は・・はい!!」
竜騎の足は震えていた、とても怖かったからだ。
しかし、竜騎の恐怖も、これから真の恐怖に変わることを、まだ誰も知る由も無かった。
竜騎は目を覚ました、起き上がろうとするが異変に気づき掛け布団をめくる。
そこには、麻衣が寝ていた、恐らく夜中に忍び込んだのだろう。
「まったく・・・」
竜騎はそう呟いて、ベットから出た。
着替えを済ませて、部屋から出ようとした時。
「ん・・竜騎・・・」
麻衣が寝言を言ってきた、竜騎は細く微笑んでから。
「おはよう、麻衣」
そう呟き、扉をそっと閉めた。
次回予告
「FIRE6 一般人と無能力者」
お楽しみに★