FIRE9 武器
連続投稿二回目、キターッ!
「実は、銃を購入したいんです」
竜騎の言葉で、工場の空気が変わった。
周りの大人達は、驚いてざわめく者もいれば、馬鹿にしたように野次を飛ばす者も居た。
「黙れっ!!」
ざわめきが頂点に達しようとした時、双吉が叫んだ。
双吉がそう叫ぶと、大人達は一斉に静まり返った。
しかし、そう怒鳴った彼でさえも、驚きの色を隠せないで居た。
「何故、突然そんな事を言う?」
「この間、近所に居たホームレスの人達が殺されました」
その言葉で、又も周りがざわめいた、しかし竜騎は気にせず言葉を続けた。
「もちろん、無能力者です。彼等は拳銃を持った警備員に、殺されました。そして、生き残った一人も夜中に殺されました。そして、おじさんに言われました、『他の人を、無能力者を救ってやってくれ』と」
その話を聞いていた数人の男が、悪態を吐いた。
「何故、殺されたんだ!」
双吉は叫んだ、その声は、明らかに怒りが現れていた。
「多分、ストレス発散か何かでしょう」
竜騎は呟いた、双吉は悪態を吐いて、泣き出した。
そして更に、言葉を発した。
「綺麗な一般市民の道路、ゴミだらけの無能力者の道路。誰かが変えなければならない、この国を、そう思ったんです。父さんのように、間違いには指摘しなければいけない、だから、俺は今日、此処に居るんです」
竜騎の言葉は、否定のしようが無い、紛れも無い事実だった。
「・・・そうか、ならば断る余地は無い、吉田!」
双吉がいきなり叫んだ、すると、吉田と呼ばれた男が近づいてきた。
「はい!何でしょうか?」
吉田は、敬礼をしながら、双吉に尋ねた。
「竜騎を武器庫まで案内しろ、私も直ぐに行く」
「分かりました」
吉田は、承諾をした後に、竜騎達を武器庫へと案内した。
しばらく、歩いていると、吉田が急に止まり、竜騎達の方へ振り返った。
「ここが、武器庫です」
そう言って、案内されたのは、鉄製の少し狭い、扉だった。
「ここが・・・武器庫?」
「はい、今扉を開けます」
吉田は、腰から鍵を取り出し、扉の錠を外した。
「どうぞ」
手招きをされて、竜騎達は中に入った。
「おおぉ~~!」
和良は驚きのあまり、盛大に叫んだ。
「わあぁ~」
刃澄も、驚いて辺りを見回した。
「「・・・」」
雄也と政義は、声が出ないほど驚き、ポカンとしていた。
「あ・・あ」
竜騎は、一言も喋らず、辺りを見回した。
武器庫の中には、今はもう時代遅れの、ボルトアクション式のライフル銃が、辺り一面に広がっていた。
その他にも、機関銃らしき物や、手榴弾、拳銃など、戦闘に必要と思われる物が、揃えてあった。
竜騎は立て掛けてある、ライフル銃を手に取った、ズシリと重みが感じられた。
「これは・・・三十年式歩兵銃か?」
「おぉー、良くご存知ですね、さすがです」
三十年式歩兵銃。
大日本帝国軍が、正式にに使用していた銃。
「何でこんなものが?・・・」
竜騎は呟いた、日露戦争では帝国陸軍の主力小銃として使用された、三十年式歩兵銃。
そんな、昔の銃がどうしてこんな所に、しかも大量に在るのか、竜騎はそう思っていた。
「どうだ、何か良い物でも在ったか?」
不意に後ろから声がした、竜騎は素早く振り返った。
だが、そこに居たのは、双吉だった。
「なんだ、東条さんか」
竜騎はそう言って、銃を置いた。
「どうだ、この銃は?上等の物だぞ」
双吉は得意げにそう言った、しかし、竜騎は直ぐに疑問をぶつけた。
「こんな、昔の銃、何処から入手したんですか?」
「え?あ、あぁ、この銃は、俺の行き付けの武器商人から、大量に購入したんだ。古い銃だから、安価だし、何より扱い易い。だから俺達は、こう言う古い銃を使っているんだよ」
「でも、誰が昔の銃なんて作って、売ってくれるんですか?」
「協力者が居てな、その人から買っているんだよ」
竜騎は置くに入って行き、機関銃を取り出し、双吉に尋ねた。
「これもですか?」
「あぁ、それは、九二式重機関銃と言って、それも大日本帝国軍正式採用の重機関銃だよ」
その後も、色々と説明を受けながら、銃を紹介して貰った竜騎は、本題に入ることにした。
「じゃあ、購入額ですけど・・・」
「ん?金?そんな物要らないよ、この銃は元々鵬斗の物だったんだ、云わば、これは子供である君に返すべき物なんだよ」
「・・・・・ありがとう御座います」
竜騎は、頭を深々と下げた。
「ところで、一体何丁持って行くんだ?」
「・・・ざっと、ライフルは五十丁、それと、機関銃も十丁程度貰って行きます」
「分かった、弾も其れなりに、今からトラックで家まで運んでおくよ」
そう言って、双吉は無線機を取り出した。
「至急、トラックを出せ、ライフル五十丁、機関銃十丁を、これから指定する場所に運べ」
『了解しました、弾薬もですか?』
「そうだ、弾薬もだ」
一言そう言うと、無線機をしまった。
「よし、これで無事に君の家まで着くよ」
双吉は、笑って言った。
「ありがとう御座います、何から何まで」
竜騎は再び、頭を下げた。
「いいんだよ、そんな事より・・・」
双吉がそう言った時だった。
突然、大きな音と共に、地面が揺れた。
「!?、何だ!?」
双吉は壁に手を掛けて、転倒を防いだ。
すると、銃を持った男が入ってきた。
「東条さん!敵です!政府に此処を知られた模様!」
「何だって!?状況を!」
双吉は顔を青ざめ、叫んだ。
「既に、囲まれています!今、総員、迎撃態勢に入らせました!」
「分かった、私も向かう!」
双吉はそう言うと、竜騎達の方を向き。
「竜騎、此処は危ない、吉田と共に、トラックに乗って脱出しろ!」
「東条さん!?」
吉田が顔を歪め、双吉の肩を掴んだ。
「どうしてです?私も戦います!」
どうやら、脱出する事に、不満が在った様だ。
「お前は、まだ若い。それに、竜騎は私達に、この日本の未来の為に、必要なんだ」
吉田はしばらく、考えていたが、直ぐに双吉に向かって敬礼をした。
「ご無事で・・・」
「あぁ、分かっている!」
そう言うと、双吉は走り去っていった。
吉田は竜騎達に向かい、声を掛けた。
「さあ、脱出しましょう。トラックは、この工場の地下にあります。付いて来てください」
吉田は武器庫から出ると、安全を確認し、ライフルを一丁持って、手招きをした。
竜騎達も、それに続いて、走り出した。
唯、生きる為に。
そう、生きる為に・・・
ストックはこれで終わりです。