追いかける側と追いかけられる側~高校サッカー選手権~
「なんであいつなんかが……!」
翔は俺達の部活でエースとして活躍し、エースとしてゴールを決めた。
反して俺は誰かの後退待ちの補欠選手。
同じ高校に入ってからはいつもこうだ。
翔はサッカーが上手だった。
同級生で、中学生のときは俺も翔もサッカーのクラブチームにも入っていた。
そのときは俺だってまだあいつと同じくらいできたんだ。
なのに……!
全国高校サッカー選手権のこの予選でさえも俺は先発で出場できないでいる。
俺の何が悪い。
こんなに努力してるのに?
こうして今日も翔の2ゴールが決め手で俺達のチームが勝った。
俺達のチーム?
俺が出場できないのに?
そんな気分のまま俺達は控室に行った。
「今日も翔はさすがだったなー!」
監督は翔をべた褒めするしチームメイトもそれに乗る。
「大樹!」
翔を呆然と見ている俺に同じ補欠メイトの大樹が腕を組んできた。
「仕方ないじゃん!まだ俺ら1年だぜ!まだこれからっしょ!」
「だといいんだけどな」
騒々しいチームメイトは控室から出ていく。
翔はなぜかこっちにやって来た。
「なあ、お前どうしたんだよ」
「なんでもねえよ」
「そんな訳ねえじゃん!言ってみろって!」
俺は息をのんだ。でも頭に血が走ってしまった。
「じゃあ言ってやるよ!なんでお前ばっかり!俺だってできるのに!」
監督が「忘れ物~…?」と戻って来るなり空気の悪さに気づいた。
そんなのも気にしないくらいに俺は熱くなっていた。
「なんで俺じゃねーんだよ!」
「俺だっていいことばかりじゃねーんだよ」
「は?」
「じゃあ俺と代わってみる?」
「喜んで代わるさ!」
「監督?聞いてましたよね?次の先発俺の代わりに大樹が出ますから!俺と同じように接するように周りに伝えて下さい」
監督は呆れるように頭を掻く。
「いいけどよ」
こうして啖呵を切って帰り、次の日もその次の日も俺は先発として練習した。
そして、運命の三日後、俺は先発出場した。
「おい!大樹!翔の代わりってことはわかっているのか?」
同じく先発出場の先輩が声をかけてくる。
「わかってますよ!」
「じゃあ2点くらい決めてくれるんだな!」
「え……」
先輩が苦笑いをして言う。
「翔は1年で先発出場ってことは、いつもこの期待を裏切らなったから成せた偉業なんだよ。見ろよ、ベンチにいるのは1年だけじゃない。3年だっている。夢を叶えられない先輩たちのプレッシャーも背負うってことなんだよ」
「あっ……」
見えていなかった。自分のことしか。
隣の芝生は青い。
あいつは同じ1年でこんなプレッシャーに耐えていたのか。やるな。
俺はベンチに座り、強い眼差しでこちらを見てくる翔を強い眼差しで返した。
俺も俺のすべきことから始めないとな。
その日の試合は俺なりに粘り強く、
なんとか1点を決めたのでした。




