09.買い物同行権は勝ち抜き戦!
同行するのは弟のシルベストレ、分家から三人だ。分家の子供達は十二人で戦い、無傷で残ったのが三人だけらしい。というより、この三人が残りを叩きのめした。ウルティア一族は強さを貴ぶ。お菓子の取り合いから、何かの順番決めまで。
負けた子も別の日や違う武器の時は勝つこともあり、不公平という文句は出たことがなかった。万が一、そんな軟弱な言葉を使ったら親に殴られるだろう。私やシルベストレもそうやって育ったのだから。
「シルはアマンドと組め、私がグラシアナとカンデラに同行する」
男女で分かれた形だ。これには理由があった。子爵令嬢のグラシアナが、服を買いたいと口にしたためだ。女性の買い物には女性が同行すべきだろう。カンデラは髪飾りが欲しいようだ。私のリボンと一緒に購入できるな。
「……そうきたか」
ぼそっと呟いたのは、伯爵家嫡男アマンドだ。一つ年下だが、剣術はなかなかの腕だった。不満があるのかと聞けば、もごもごと口を動かした後「いえ」と短く返る。よし、問題ないな!
ルカは残念だが留守番だ。店の中で走り回られても困るし、見た目が派手なので攫われるかもしれない。好奇心旺盛な子供のうちは危険だらけだ。ララウにルカの世話を頼み、愛馬を放した柵へ向かった。分家の当主夫妻の馬が増えたため、隣の柵も解放されている。
「モニカ! 来い」
穀物をたっぷりと与え、ふかふかの干し草で眠った愛馬モニカは栗毛の牝馬だ。額の白い流星が綺麗な美人だが、声を聞くとすぐに駆け寄った。ぽんぽんと首を叩き調子を確認する。ぶるると首を振る様子は元気そのものだった。
「街まで行けるか?」
尋ねた途端、数歩下がった。地面を掻く仕草をしたあと、一息に柵を飛ぶ。運んだ鞍を装着し、さっと背に跨った。ご機嫌のモニカの周囲には、四頭の馬が並ぶ。
合図は必要なかった。誰かが走り出せば、自然とついていく。先頭を切るのはアマンドの黒馬だ。一番後ろを私とモニカが守る。ここから街までは、二時間もかからなかった。
到着した街で、専門の業者に馬を預ける。盗難防止と水や餌の世話を任せるのが通例だった。見送るモニカにも、リボンを買ってやるか。鬣の一部を結んだら可愛いんじゃないか? 想像したら楽しくなった。
「僕らはあっちだから」
シルベストレはアマンドと鍛冶屋のほうを指さした。落ち合う店を指定し、時間も確認した。一時間後に決めた定食屋で! それだけ決めれば十分だ。
「さあ、お姫様達。どうぞ」
腰に手を当てる形で待てば、右腕にグラシアナが腕を絡める。遠慮がちなカンデラが左腕に触れるが、中途半端でこそばゆい。左手の指を絡める形で、しっかり手を繋いだ。
「まず服からだな。グラシアナはどんな服でも似合うが……今日は何が欲しいんだ?」
「……柔らかな緑のスカート、それに似合うブラウスも欲しいわ」
笑顔で腕に頬を寄せる可愛い少女二人を守りながら、頭に思い浮かんだ店から選ぶ。人にぶつからないよう注意しながら、混雑した街へ踏み入った。




