89.二つの話が溶け合って繋がる
「アルバ王国への対策はどうしますか?」
将来的に『モンタネール王国』に身を寄せるなら、他人事ではない。はっきりと示した私に、父上は目を細めて満足そうに笑った。ベスからの情報提供を知っている? まあ知られても問題はないが。
「お前ならどうする? アルバ国王の狙いは何だと考える?」
「そうですね。私ならカランデリア様と一緒に背後を突きます。アルバ国王が暴走したのは、キロス王国に勝った成功体験で気が大きくなっているからでしょう」
ちらりとカランデリア様へ視線を向ける。悠々と紅茶のカップを傾ける様子は、こちらの話を聞いていないように見えた。だが耳を傾けているはずだ。そうでなければ、母上同様に部屋を出ただろう。
「もう一つ、カランデリア様の挑発も影響しているかもしれません」
巻き込むつもりで、カランデリア様を話題に出す。美女は髪をかき上げながら首を傾げた。褐色の首筋が晒され、どきりとする。同性でも効果がある色気は、ほぼ凶器だな。
「挑発なんてしたかしら?」
「あなた様にしたら、少しのご挨拶だったと思います」
アルバ王国を挟んで反対側から、王都を抜けてこちらまで国を横断した。その際に王宮でひと騒動起こした話は聞いている。喧嘩を売ったのは、高く買い取らせるためだ。
「カランデリア様に軽んじられたと考えれば、国王陛下より周囲が黙っていません」
モンタネール辺境伯領に攻め込むなら、こちらに背を向ける。その際にカランデリア様が後ろから挟撃したら? 国内で大混乱になるだろう。愚かな軍人が反転攻勢に出ようとするなら、そこから突き崩せる。
ふと、父上の持ち出した屋敷の売却話が過った。ああ、そのためにバシリオの話をしたのだ。すとんと腑に落ちた。頭の中で繋がっていく。謎かけが解けた瞬間のこの感じは好きだ。自然と口元が緩んだ。
「なら、ウルティア一族を雇って攻め込もうかしら?」
「それも可能ですが、せっかくの機会です。同盟国を増やしてはいかがか」
カランデリア様の提案に付け足す。否定はしない。おそらく父上や母上は、未来のモンタネール王国との付き合い方を決めたはず。
「我らがここでアルバ王国と向き合えば、背中側が手薄になります。それでは彼らの愚行と大差ない。私ならば、先にキロス王国へ内々の同盟を提案するでしょう。ついでに屋敷の残金も値引いてしまえばいい。それ以上の代金を、アルバ王国から回収できる」
年配者への敬意から出ていた丁寧な言葉が、徐々に崩れていく。気づいたが直す気はなかった。重要なのは中身であり、包装紙ではないのだから。




