08.隣国の王都へ買い物に行くぞ
ルカには青いリボンを巻いた。ちょうど手元にあったリボンの中で、長さがぴったりだったのだ。白い毛並みに青は似合う。いや、赤やピンクもいいな……黄色は印象がぼけるが、私の目の色で緑も捨てがたい。
「うーん」
「どうしたの? 姉上」
「シルか。ルカのリボンの色なのだが」
芝生でルカを走らせながら悩んでいた私に、弟のシルベストレが話しかける。いつもながら気遣いの出来る奴だ。年齢の割に大人びているせいか、年上にモテる。背伸びしていて可愛いと友人が騒いでいたな。
私の可愛いメーターなら六だ。もちろん十段階だぞ。ルカは七か。現時点で最高が八なので、上の二つは将来のために取ってある。ちなみに基準は厳しいので、五を超えたら自信を持っていいだろう。
きゃん! 足がもつれて転がる姿に「うっ、可愛い」と声が漏れた。八に昇格目前だぞ、ルカ。
「姉上のペットとわかるよう、緑がいいかな」
シルベストレは、曖昧な言い方をしない。自分の意見をきっぱり提示してくるので、私は好ましく思ってきた。曖昧に「あれもこれもそれもいいと思います」と言われても、全然参考にならないからな。
「そうか。緑は買ってこよう」
街へ出るなら、辺境伯領から国境を越えて隣国へ向かう。領地内の商店は「可愛い小物」が少ないのだ。食料品や武器は大量にあふれているので、生活には困らないのだが……。
「姉上、街に出る? 僕もいく」
「父上に相談してからにしよう。今は難しい時期だからな」
王都への距離は遠いが、隣国サンドバルの王都とは近い。そのため、買い物でよく訪れる場所だった。何度も通っているので慣れているが、今は複雑な時期だ。アルダ王国から離脱し、サンドバル王国へ乗り換えようとしている。
確定する前に遊びに行くと言えば、止められる可能性も考えていた。
「構わんぞ」
「……あ、はい」
あっさり許可が下りて、拍子抜けする。だがここからが問題だった。分家の子らが同行すると騒ぎ始めたのだ。一つ下の伯爵家の長男アマンドが護衛につくと宣言し、グラシアナも「服が欲しい」と同行を申し出る。
「狡い、私も行きたい」
「あんたは前回一緒に行ったじゃない!」
騒ぎは騒ぎを呼び、十数人が素手で取っ組み合う状況に……。全員は無理だし、半分まで減らすよう伝えてルカを部屋に戻した。そこで気づく。
「ところで、皆が集まって何をしているんだ?」
「分家の当主夫妻が集まり、会議をなさいます」
侍女ララウの説明に、なるほどと頷いた。今後の対策と一族の方針を確認するのだろう。今回の原因ではあるが、私がいても役に立たない。それで父上も外出許可をくれたのだと気づいた。逆に当事者がいないほうが、意見が出やすいかもしれないな。
さっと着替えて、髪を高い位置で結ぶ。馬の尻尾の形、ポニーテールが一番動きやすかった。頬や額に髪がかかると鬱陶しい。ぴたりとしたパンツに裾や袖へフリルを付けたシャツ、上着は騎士服に似せて作らせたお気に入りだ。鏡の前でぐるりと回り、満足して腰に剣帯を下げた。
「よし、行ってくる!」
可愛い緑のリボンを探すぞ!




