76.国王派と無礼派に分けるか
「微妙に俺らが馬鹿にされている」
ぼそっと呟いたセシリオが項垂れる。仕方あるまい。褒められるような態度を取ってから、文句を言えばいい。今までの言動を見る限り、王家が舐められた原因は王族にありそうだが?
片方の眉尻を上げて、問う眼差しを向けた。遮るように間に入ったフリアンに呆れる。そこはもっと早く動くべきだし、極楽鳥令嬢に対して発揮するべきだった。私を牽制して距離を取ってどうする!
「ねえ、お兄様。ルカが……」
ベスに指摘されて視線を落とす。抱き着いたルカが、すごい角度に首を曲げて寝ていた。熟睡しているらしく、小さいながらいびきが聞こえる。寝息ではなく、いびきだな。
首が痛くないんだろうか。手で支えると、懐くように頬を寄せた。その動きで角度が変わり、ルカはうっすらと目を開く。
「起きるか?」
声をかけるも、そのまま寝入ってしまった。霊獣の興味なさそうな態度に、極楽鳥は絶句している。このまま追い払ってしまおう。王族やルカへの不敬を問うだけなら、ほかにも獲物はいる。何より、この令嬢の後ろにいるであろう親のほうが、害悪だろう。
「帰っていいぞ、極楽鳥令嬢として覚えておく」
「なっ!」
息を吸って叫ぼうとした令嬢の肩を、ぽんと気安く叩いた男性に目を細めた。服装はそれなりに整っており、尖った三角の顎鬚に特徴がある。髪や瞳の色が極楽鳥令嬢と同じなので、父親だろうか。
「礼儀作法を説くなら、ウルティア総領家とやらの立場を教えてもらおうか。我が侯爵家を下に見るほどご立派な家なのだろう?」
煽る口調で入ってきた侯爵閣下を、上から下までじろじろと見た後「中の下」と呟いた。ぷっと噴き出したのはベスとフリアンだ。聞こえたはずのセシリオは厳しい表情を崩さなかった。
この国の貴族を大きく二つに分けるとしたら、国王に近い派閥と無礼で身勝手な派閥か。国王派はクルス公爵家を筆頭に、常識的な貴族が続く。と言っても、王家の権威を守れていない時点で無能なのだが。無礼で身勝手な連中の呼称は……そうだな。
「無礼な貴族……無礼派でいいか」
ぼそっと零した言葉に、侯爵が反応する。こちらの派閥には、ロエラ公爵がいるはずだ。王家の権威を貶めて、自分達が代わりの王を立てる。国の実権を握ろうと画策する、逆賊だ。
「いま、なんと?」
「聞こえなかったのか? 耳が遠いのだな。お気の毒なことだ」
前半部分を小さく、最後の部分だけ大きく話す。周囲の貴族には「お気の毒」だけが強調されて聞こえただろう。貴族というのは、噂話が主食だ。見栄で飾りながら、他家の醜聞を探している。気の毒と聞けば、美味しい主菜を求めて近づいてくるのが習性だった。
霊獣ルカに興味もあるだろうし? 父上や母上から止める合図はない。まだ暴れてもよさそうだな。




