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可愛いものだけ溺愛して生きていきます  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


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06.砦が見えても気を緩めるな!

 可愛いものは好きだし、女性らしいことも興味がある。しかし辺境伯領は常に戦いの最前線だった。そんな場所で暮らしていれば、令嬢も逞しくなる。細身で筋肉は目立たないが、それなりに腕も足も太い。綺麗なドレスも肩を隠すデザインが主だった。


 腰は細くコルセット不要だが、胸がやや小さい。いや、硬い。ここも筋肉なのかと悲しくなるも、生きるために必要な筋肉なら仕方ないか。嘆くより前向きに受け止めるのが、辺境出身者の特徴だった。くよくよ悩む者は長生きできないとも言える。


「姉上、砦の旗が見えました!」


 まだ子猫サイズのルカを腹に巻いて走ること半日、やっと旗が見えた。明け方から昼まで眠るため、もうすぐ日が暮れる時間帯だ。暗くなる前に砦に着いて安心した。


 父上達の表情もほぐれる。険しかった眉間の皺を消した分家の叔父上が声を張り上げた。


「者ども! あと少しだ、気を緩めるな」


「「「おう」」」


 以前に戦場帰りの一行が、砦の旗を見て気が緩んだのか……馬ごと川に転落する騒動があった。生まれた翌日から馬に乗ったと豪語する連中が、川に転落? 乗馬した状態で! 大笑いされて恥をかいただけでなく、こうやって折に触れて教訓にされている。気の毒だがこれも必要なのだ。


 私も気を付けねば……眠るルカを左手のひらで包んだ。興奮して砦に駆け込んだら、ルカを落としていたなんて間抜けな状態は御免だ。そういえば、王都からの帰りに居眠りして荷物を落としたのは……父上だったか。


 分家の当主夫妻や子女が同行したことで、行列は長い。砦の手前にある草原地帯では、酪農に従事する領民が手を振っていた。気軽に声を掛ける彼らに、こちらからも応じる。手を振り、応えながら門をくぐった。


 開門された砦の内側に入ると、わっと歓声が上がる。後ろの分家の声も大きいが、さらに大きな歓声を上げるのは砦の兵士達だ。男女関係なく大喜びで駆けてくる。慣れている愛馬はぶるるんと首を振って終わりだが、ルカは初めての大声に目を丸くした。


 うーっ! 威嚇するように声を上げて牙を剥く。ぽんぽんと上から叩き、馬の背から降りた。腹に巻いたシャツを外し、中からルカを取り出す。胸元で抱きしめれば、唸るのをやめた。安心してくれたなら、嬉しい。


「ベアトリス様、その子可愛い!」


「白い……狼?」


 駆け寄った分家の女の子が、きゃあきゃあ騒ぎながら抱き着く。咄嗟に持ち上げて庇ったルカだが、あっという間に少女達に見つかった。


「狼なのか……」


 私が狩りをしたときに見た個体とは、だいぶ違うな。


「あ! ベアトリス様おかえりなさい! ご当主様や奥様、若君も無事でよかったわ」


「ありがとう、アドリアナも元気で嬉しい」


 微笑んで、いつも通りの挨拶をかわす。きゃー! と叫んだ彼女が興奮するのは、もう発作のようなものだ。凛々しい女騎士様と認識される私は、仮想恋愛の対象らしい。理想の王子様、というやつだ。まあ、少なくとも王都の王子様よりはカッコいいと自負している。


「明日はどうなさるの?」


「一日休むつもりだ。明後日は狩りか釣りをしたいが……隣国との交渉があれば先送りか」


 従姉妹でもあるアドリアナに答えながら、私は屋敷へ向かった。砦の奥、古い石造りで平屋の建物だ。懐かしい我が家に「ただいま戻った」と告げて、その扉をくぐった。

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― 新着の感想 ―
無事に到着!帰り着くまで油断大敵! にしても、馬ごと川に!?怪我人は、いなかったですか?気が抜けたとはいえ、何で川に?暗くて川に気づかなかったのかな? ルカちゃんが何種なのか、気になりますv
猪を倒してくれた猫作者さんに小人達は敬礼します。幸い、小人達に重傷者は居ないので小人ポーション飲めばバッチリです。 猫作者さんに目玉焼きとベーコンをあげて眠りに着きます。 翌日からポニーに乗って砦に向…
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