50.服と手土産は決まった、初戦は明日!
柔らかな絹のスカートはピンク、白に溶け込みそうな淡い色を選んだ。上に重ねたのは、桃色のレース素材だ。グラシアナは刺繍を使いたいと訴えたが、二日しかないので却下された。間に合わないなら、次回のために準備をすると息巻いている。
何度か王宮へ向かう予定があるので、昼用と夜用で三着ずつ仕立てることにした。これは必要経費なので、特に問題はない。装飾品は一族に伝わる豪華な宝飾品が使えるので、新しく作らなかった。一族の鍛冶師からクレームが入りそうなので、後日見直される可能性もある。
今回は淡いピンクの上に桃色のレース。ベスのドレスはそれで準備された。幼さを前面に出して相手の油断を誘う計画なので、スカート丈はやや短く。足首が見えるギリギリの長さにした。緊急時に座り込めば、ポケット状の筒から太ももの隠し武器に手が届く。
人前でスカートを捲るのははしたないからな。幼さを武器にするなら、スリットも使えない。苦肉の策として採用した。
私はお揃いで白に薄ピンクのストライプが入ったシャツ、濃桃の上下だ。騎士服に似た仕立てで、銀のモール飾りも入った。そこへ一世紀近く前の勲章を飾る。これは個人ではなく一族への褒章だったため、直系の許可で誰でも着用可能だった。
どうせ古王国のことなど知らないだろうが、バカにされたら切り札としてちらつかせるためだ。あちこちにチクリと痛い棘を隠し持つ装備は、当然、可愛いルカにも適用された。
「ルカ、可愛いぞ」
得意げに胸を張るルカは、愛玩犬のようだ。前足を通すタイプの筒状の服は、伸縮性が高い生地を選んだ。首回りや裾は銀糸の白フリルを飾り、ベスと同じ桃色のレースを重ねる。燕尾服のような切れ目から、立派な尻尾が見えた。
ルカの尻尾は意外と大きく、胴体と同じくらいある。狼や犬というより、キツネのようだった。ただ長さはあるものの、やや細い。ふわふわした尻尾の毛は体より長く、きゅっと握れば猫ほどの太さしかない。
きゃぅう! くるくる回って、似合うか? と尋ねるようなタイミングで首を傾げる。その愛らしさに「可愛い、凄く似合う」と褒めて抱き上げた。同サイズの犬より軽いのは、霊獣だからか。
「明日が楽しみだな」
「私も」
さすがに僕っ子設定は引っ込め、微笑んだベスは貴族令嬢そのもの。今回は地位を尋ねられてもぼかすつもりだ。地位を振り翳して襲ってくる連中を最初に排除する。排除された連中を見ても諦めない阿呆は、次のターゲットだった。予定を組みながら、明日のための衣装を脱いだ。
「お茶会か、何か手土産が必要かな?」
「そうですね……香水がいいでしょうか」
「ぴったりのがあるぞ」
青紫の瓶に詰めた香水を取り出し、にっこりと笑った。捨てようかと思っていたが、役に立ちそうだな。




