49.王太子を追い返して衣装決め!
王族より王族らしく、どんな貴族より素晴らしく。常に頂点を目指し、研鑽を怠らない。そのくらい当然だろう。そのために生まれたときから敬われてきた。愛され、無条件で受け入れられた。対価として、民を守る盾にならずしてどうする!
役立たずの盾なら不要だ。視界を塞ぐだけ無駄になる。だから倒れない、絶対に負けないことが当主一家の義務だった。その程度の覚悟もなく、王太子が務まるなら……王族とはなんと傲慢な一族か。
呆れるものの、口に出して教えてやる気はない。私はウルティア宗家の娘なのだから。そこらのいつ倒れるかわからない王家と同じではいられない。
「王宮の準備は出来たからいつでも。フリアンがビビアンと顔合わせの機会を作るそうだ」
お茶会を理由に顔を出し、王宮に入り込む。霊獣ルカを理由に居座り、本物の婚約者を排除しようとする木の根を排除するのが仕事だ。再度確認した。条件が狂えば、その後の計画が台無しになる。ズレが生じたと思えば、何度でもすり合わせる必要があるだろう。
「明後日以降なら、準備できます」
ベスが自ら期限を切った。ならば私は合わせるだけだ。今回の主役はベスで、私は添え物で支え役だった。可愛いベスを着飾らせるために、衣装を選ばなくては。私とお揃いにして溺愛を強調するべきか? ついでにルカも色を揃えた服を……ああ、そうだ。侍女に裁縫を頼まなくては!
「忙しいから今日は帰ってくれ」
「……それが一国の王太子に対する発言かなぁ」
「帰れ。それと今は共犯者だ」
にやりと笑って、手でしっしっと追い払う。くつくつと喉を震わせて笑ったセシリオが、一礼して踵を返した。声の聞こえない場所で待機していた護衛が、すっと後ろに控える。見送って、自室へ。すぐにバシリオ経由で裁縫の得意な侍女を呼んでもらった。
「あら、刺繍なら自信があるわ」
「手伝いはできるわよ」
グラシアナやカンデラが手伝いを申し出たので、ルカの採寸を任せた。その間にララウを含めた侍女達と服選びに入る。銀灰の髪に青目のベス。緑の瞳と金髪の私。これでルカが白い毛皮に新緑色の瞳だ。見事にバラバラで、色合わせに迷う。
「深緑で金刺繍は?」
「ええ! こないだの紺がよかった。刺繍を銀と水色にして」
「時間が足りないです」
あれこれ意見がでて、最後に思わぬ方向へまとまった。黒い服だ。すべての色を併せ持ち、同時にすべての色を取り込む。誰が着ても似合うのに、本当にしっくりくる人は限られる。難しい色だが、顔見せなら派手に……と盛り上がった。
「お嬢様、若様。お忘れのようですが、お茶会、ですよ?」
ララウに指摘され、残念だが黒は封印された。お茶会は淡い色が原則、黒はいずれ夜会などで披露することに決まる。危なかった、ララウがいなければ黒で準備するところだったな。




