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可愛いものだけ溺愛して生きていきます  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


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02.一刻を争う脱出劇も楽しまねば

 出ていくと決めてからの動きは早かった。馬車に乗らず、騎乗で駆け付けるのがウルティア一族のマナーだ。それぞれに愛馬に跨ると、一斉に走らせる。方角は同じだった。ウルティア本家の王都屋敷の周辺に、分家が屋敷を構えている。一塊となって夜の街を駆けた。


 混雑する王都の中央通りを避け、一本裏の通りを使う。領地内では緊急時に、先触れとなる騎士を走らせて軍の移動を知らせた。同じ方法を取り、男爵家当主が一人先頭に立つ。混乱を防ぐため、最低限の気遣いだった。


 アルダ王国には公爵や侯爵を筆頭とする一族が五つある。そのうちの一つが、ウルティア一族だった。東から南までの国境を管理する我が一族のほかに、反対側を管理するモンタネール辺境伯家がいる。あとは中央に蠢く二つの公爵家と一つの侯爵家が、中央で権力争いをしていた。


 軍事力という意味で言えば、各一族に騎士団や兵団が存在する。しかし実際の戦いで使えるのは、うちとモンタネール家だけだろう。その片方が離脱するのだ。挨拶くらいしておくべきか。


「構わん、奴もあの場にいた」


 両側に騎士を連れ、危険を避けながら走る私は父上にお伺いを立てた。その返事は、ある意味当然ともいえる内容だ。モンタネール辺境伯家も、夜会に参加していたのだから。


「あの顔では、奴らも離脱するぞ」


「まあ素敵! カンデラリア様とは今後もお付き合いしたいの」


 馬に跨った母上の発言に、脳裏に浮かんだのは美しさで有名なモンタネール辺境伯夫人だ。母上とよく狩りをしていたな……。貴族夫人らしからぬ趣味だが、二人は意気投合していた。あの夫人はたしか、モンタネール家の直系で婿を取ったはず。


「それは重畳(ちょうじょう)!」


 動きやすいよう、王都の端に屋敷を構えたのは正解だった。駆け込むと馬から降り、すぐに引き上げの手配を始める。細かな荷物や家具、屋敷の処理は執事に一任した。手回りの荷物だけ作り、愛馬の鞍に掛ける。旅に最低限必要な物を選ぶ作業は、手慣れたものだ。


「準備ができたぞ」


 声を上げて水を飲む愛馬の(たてがみ)を撫でる。着替えも不要だ。三日後には辺境伯領に入る予定だった。シャツと替えの騎士服を入れたバッグは、鞍に掛けやすいよう半分に割れている。反対側に緊急用の食料と水、使いやすいよう小銭を詰めた。


 途中の町には、支援を担当するウルティア一族の者がいる。野宿を続けながらの移動も問題ないはずだ。


「お先に!」


 数人の騎士が、緊急用のバッグを付けて馬を走らせる。彼らが先触れとなり、各町の一族の者へ声を掛けて回るのだ。我々が通過した後は、支援組も引き揚げて本家に合流だった。以前から緊急時における対応は決まっており、国を捨てる覚悟は出来ている。


「父上、母上、参りましょう」


「バシリオ、すべて処分して合流せよ」


「承知いたしました。ご武運を」


 かつては諜報員として働いた執事、バシリオに後を任せる。すべて処分して合流する彼の心配は不要だった。第一線を退いたとはいえ、まだ十分現役で通用する人物だ。暗器の扱いに関しては、私はバシリオの指導を受けた。執事であり師匠でもある男に、笑顔で手を振った。


「先に行くぞ」


「お気をつけて、お嬢様」


 私をお嬢様と呼ぶのは、あの男くらいか? 侍女達でさえ、ベアトリス様と呼ぶのに。くすっと笑い、馬の腹に合図を送る。風を切りながら、ふと気づいた。耳飾りを着けたままだった。無造作に外して、暗器用のポケットに放り込む。


 一刻を争う! 本家の私が、一族の誰にも後れを取るわけにいかぬからな。

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― 新着の感想 ―
小人達もポニーに乗って追い掛けます。猫作者さんを背中に乗せました。小人王国に行く小人達と別れて進みます。伝令小人は先に走って行きました。
やっぱり早い(笑)爽快!
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