表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
可愛い弟を溺愛しながら生きていく  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/66

19.かつての敵が差し伸べた手 ***バシリオ

 王家が崩壊する予兆は、すでに表れていた。先に出発した旦那様達を見送り、すぐに屋敷仕舞いに入る。家具は屋敷の一部なので、売買する際は同時に取引する。ところが、買える貴族がいなかった。何という情けない有り様か。


 調度品を領地へ送り出しながら、使用人も少しずつ屋敷を離れる。半数ほど離脱したところで、残った財産を再確認した。持ち運び可能な調度品はもうない。屋敷、庭、裏の林、馬のための牧場、騎士の鍛錬場……ほとんどは不動産で移動ができない。白い布で覆った家具を確認し、見回りは欠かさない。


 入り込んだネズミを始末したのは、もう片手に余るほど。購入する金額がないなら奪えばいい、などと……愚かな考えを持つ貴族もいたものだ。そのような輩は当然、排除している。実行犯だけでなく、その後ろで糸を引く愚か者も。


 侯爵家が一つ、伯爵家が三つ、子爵家が二つ、男爵家が一つ。ウルティア一族の強さを知っていても、使用人だけになったなら手を出せると考えたのか? 強い主君を誇る我らが、弱い使用人でいるはずもない。それぞれの家に実行犯を突き返し、その家の主人も脅した。


 ようやく静かになったが、そろそろ屋敷が売れなければ困る。主君を追いたい気持ちが高まる私を知るように、その男はふらりと訪ねてきた。


「こちらのお屋敷が売りに出たと聞きました。価格を教えていただけるかな?」


 王都の中心地、最高の立地だ。広さも歴史も最上級の屋敷に相応しい値段を告げた。王族ですら払えるかどうか。わずかに目を見開いた男は、条件を提示した。


「二度に分けての支払いで構わないなら、購入したい。半金は明日、残りは一年後になるが必ず払おう」


 一年後……普通の男が口にしたなら、鼻で笑って終わる。だが、彼はただの貴族ではない。契約書を作成しようと言い出した男に承諾を伝えた。屋敷の処分については一任されている。満足そうに彼は片方のピアスを外した。薄い金プレートに細かな装飾が施されている。


「約束の証にこれを。では明日」


 時間を約束して、馬に跨る男を見送る。後ろに控えていた侍女が「大丈夫でしょうか」と不安そうに呟いた。踏み倒される心配をしているのか。口角を持ち上げ、踵を返した。


「問題ありません。あの方は……国の頂点に立つお方ですからな」


 耳飾りの金プレートに刻まれた紋章は王族の証。このアルダ王国を侵略する機会を狙っていた国を率いる人物だ。引っ越しと称して、この屋敷を足掛かりとするのだろう。王国の守護者が消えたと聞いて、確認しに来たのかもしれない。


「モンタネール家の離脱の情報も、掴んでいるでしょう」


 侍女に扮した影は、静かに一礼して下がった。


 屋敷の売却が済めば、この国がどうなろうと知ったことではない。主君を、大切なお嬢様を縛り付けた鎖が、粉々に砕かれる姿を見られるなら、一年後の支払いも悪くないか。悪い顔をしているのを承知で、笑みを深めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
小人騎士団は見た!!バシさんも中々ですのう( *´艸`)
わあ、(仮想)敵国の王様に買われてるー(笑) 異国の人に不動産を売買することを禁止する法律とかないのか? ……よく考えるとなさそうだな、普通なら売らない。普通ならね?(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ