10.優男ではないんだが?
服は意外にもすぐ決まった。
「これが似合うと思う……そうだな、スカートはこれなんかどうだ?」
店の入り口に飾られていたブラウスを選び、奥でスカートを見繕う。私自身を着飾ることに興味がないだけで、美しく可愛い女性は好きだ。王族の婚約者をしていれば、自然と目も肥えてくる。愛らしい年齢の装いから、円熟した方々の選ぶ麗しさまで。
好ましいと思った色や組み合わせは、頭に刻まれていた。グラシアナは顔立ちがはっきりしており、色白だ。ブラウンの髪を平凡だと本人が嘆くも、私にしたら逆だった。どんな色合いでも茶髪なら相性がいい。緑のスカートもそうだし、フリルたっぷりのブラウスも着る人を選ぶ。
「ありがとう! ベアトリス様が選んでくれる服は似合うから、文句なしだわ!」
「嬉しいな、可愛いグラシアナを飾れるのは光栄だ」
微笑んで顔を寄せる。頬に唇を寄せるのは、我が一族では普通の挨拶だった。目を伏せて受けたグラシアナから、私もキスを受ける。
「私も……スカーフを買おうかしら」
「そうだね、髪飾りだけではもったいないかな」
カンデラの小さなつぶやきを拾い、考えた。小麦色の健康的な肌を縁取る黒髪、顔立ちは愛らしく幼い印象を与える。カンデラなら、可愛い柄の華やかな色がいい。散らした小花柄のスカーフを選んだ。大きな柄もいいが、こちらのほうが似合う。
ふわりと肩にかけ、鏡を見るカンデラの後ろから頬を寄せた。
「ほら、似合う」
「っ、これにします!」
嬉しそうな彼女と頬のキスを交わし、二人の会計が終わるのを待った。ここで代わりに支払ってもいいのだが、彼女達が嫌がるのだ。お金の扱いに関しては細かい決まりがたくさんあった。一族没落の原因にならぬよう、贅沢は戒められている。
自分が使う物は自分で買う。プレゼントの際も予算を決めて使う。当たり前のこととして叩き込まれたウルティアの女性は、婚約者であっても奢らせることを躊躇うのだ。
「リボンを見に行きましょう!」
両手に華で店を出て、髪飾りやアクセサリーを扱う店の前で……変な男達に絡まれた。
「なあ、お嬢ちゃん達。俺らと遊ぼうぜ」
「そんな優男は放っておいてさ」
きょとんとした後、グラシアナとカンデラは嫌そうな顔になった。
「あんた達なんて、お呼びじゃないのよ」
気の強いグラシアナが鼻で笑った。馬鹿にした強気な態度の理由は、私の強さか? こういうところが未熟で可愛い。ふふっと笑った。
正直、ままあることだ。どんなに鍛えても私は女性だ。当然だが、男になりたいと思ったこともない。筋肉もりもりの一族男性の中に立てば、ほっそりしていた。
中性的な外見が、婚約前の少女達には王子様らしく見えるようで……筋肉だるまの多い一族の中で人気を博している。つまり、外部の男性からも細い優男と勘違いされやすかった。好んで男装に近い格好をしているので、性別を間違えられたからと文句を言う気はないが……さて、どうしたものかな。




