48 最後の相談。そして否定された現実。だが残されたのは時間の謎――
そしてある日――、
「こんにちはー」
時田は岸田君の家に足を運んだ。
「どしたん? 相談があるって」
「……実は」
時田は中学以来、思考盗聴器について、初めて知り合いに相談した。
「そっか」
「うん」
「そんなモノは、今の時代、無いよ」
「!?」
「そんなモノがあったら、もっと今の世の中、面白くなっていると思うよ」
(あ……れ……?)
(回想)
時田の脳内で、岸田君の声が聞こえていた。
『あの時僕が知っていたら……』
(回想終了)
(あの声は……別人……?)
時田は困惑した。あの時聞こえてきたのは、確かに岸田君の声だった。
「じゃあ、話はそれだけ?」
「待って!」
「?」
「それのせいで、中学の頃は精神科に入院までして……ホント困ってて!」
「! ……分かった。そういう人になったんだな。それは幻覚とかだよ」
「!?」
必死だった。藁にも縋る思いで、岸田君に相談したのに……。すると、声が聞こえてきた。
『じゃあ、岸田君が悪いんじゃん』
『ごめん。でも分らんかったんだ』
『あーあ、岸田君のせいで』
「!?」
「で、話がそれだけなら、終わりでいいね?」
「あ、うん……今日は……ありがとう……」
時田は岸田君の家を出た。音声送信は……。!! まさか……!
(音声送信と今とで、時間軸が、ズレている……!?)
時田はその、一つの推論に辿り着くのだった。
――、
時田は家に帰り、考え込んだ。
(それなら――、
ナルの声も、未来からの声……? それとも過去から……? どこで、何が起きている!?)
「ひとまず……」
(思考盗聴器を理解している岸田君は、今現在存在しない……!!)
ちらりとカレンダーを見る。
(あと四日……)
あと四日で、時田は関東地方に引っ越す。地方暮らしの現在地ではない、首都圏の関東に……。
(何か策は……!? 思考盗聴器の存在を知る味方はいないのか……? このままでは思考盗聴器が更に広まって、生活できなくなる……!)
焦りはするが、何もできずに日にちが経過し、
三日後――、
「フー、仕方ない……か」
時田は腹をくくって、関東に引っ越す準備を済ました。引っ越し前夜、床に就いた時田は思うのだった。
(もしかしたら、思考盗聴器と時田の事を知らない人だらけで、普通に生活できるかも知れない。音声送信さえ我慢できれば、勉強もついていけるハズ……)
僅かな希望を抱いて、時田は眠りに就くのだった。
翌日――、
「行くぞ」
心配性で世話好きのシゲミが、関東まで見送ってくれる。
車で小一時間程走り、新幹線の最寄り駅に着く。
「――」
新幹線のアナウンスが鳴り響くホーム。キャリーバックを引きずりながら進む。
「プシュー」
新幹線の扉が閉まる。
父と共に座席に座る。父はキョロキョロしていた。
(どっちが子供か分からないなぁ、全く……さて)
関東に行ったら、知り合いなど居ない、協力者も恐らく居ない。たった一人で、思考盗聴器を仕掛けられたまま人間関係を作っていかなければならない――。
(やれるか……?
はっきり言って自信無し)
時田は大いなる不安を残し、関東へ乗り込むのだった。
第六章 束の間の高校編 完




