47 合格しても終わらない理不尽。それでも現れた、小さな希望――
筆記試験の試験会場――。
会場全体に広がる静寂の中、鉛筆のすすむ僅かな音だけが、静かに鳴り響く。
(何か、ひっかけ問題ばっかだ……)
機械の様に問題を解く中、一つの気付きを感じ取るが、そこで止まっていては時間的に間に合わない。再び時田は機械の様に問題を解き続けるのだった。
試験は終了した。
(フー、まあまあかな?)
手応えはそれなりに有った。だが、思いの外疲れる。
人が密集するとそれだけで疲れるものだ。しかも、そんな中、少しばかり多い問題の数々を決められた時間内に解いていく。二択の問題が、更に空間の無機質さを深めていく。それらの要素によって、時田は神経をすり減らした。
結果は――
合格!!
(よし……!)
自慢ではないが、時田は人生における重要な試験を、未だに落としたことは無い。
(よし! ……これで思考盗聴器さえ無ければ、順風満帆な人生なのにな……)
『何か受かったんだって』
『やるじゃん』
試験中、無視できていた音声送信も聞こえてきた。くっ、
(次、乗車試験あるけど、気が散るから黙っといてくれよ。どういう仕組みだか知らんけど、頭ん中で話すのは止めろよ?)
『えー、いいじゃん』
「! ! ! !!」
時田は酷く憤慨した。すると――、
『……』
音声送信は鳴り止んだ。
(! ……よし、これで午後からの乗車試験、何とかなりそうだ)
――、
あっという間に時間は過ぎ去り、午後の乗車試験の時間になった。
乗車する順番は、午後の一番始めの順番だった。
「お願いします」
「はいよ」
明らかに人を嫌っていそうな態度の人が、試験官だった。あまり気にせず、決められたコースを回る。カーブに差し掛かる。すると――、
「内輪が当たってる、不合格」
(は?)
「不合格だよ」
(はいぃぃいい?)
時田はその後、最短距離でスタート地点に移動する事になる。
不合格。
時田は納得していなかった。
サイドミラーから見た、車の内輪は、角度的に白線に当たっていなかったからだ。
「はい、次の人―」
「……」
『落ちたんだってー』
『ダメじゃん。ヘタクソか?』
(黙れ)
『……』
待合室に戻る。教習所の教官さんが話し掛けてきた。
「どうだった?」
「何か、内輪が白線に当たっているって言われて、落ちました」
「そうか、あの試験官は良く落とす事で有名だからなぁ」
「……!」
(何ですとぉおお!!!?)
「まぁ、そんなヤツも居る。次、頑張れ」
「……」
納得いかない……。仮免許の試験は数万円かかる。
(そうやって金を稼いでいるのか……)
時田は大人の厳しさを味わうのだった。
数日後、またしても同じ試験官による試験を行う事になる。そして今度はワイパーの速度が遅いという謎の理屈で落とされる事となった。そうして、2、3回落とされてやっとこさ仮免許を取得する頃には、大学がある、関東地方のとある県に行く頃になっており、本免許は夏休み中に取得する様になった。
(ナルさえ居なければ、教習所で過呼吸を起こすことなく、卒業式にも出られて、余裕を持った日程で免許の試験を受けられただろうに……
さて、免許のことはそのくらいにして、思考盗聴器――。こいつをどうにかしない限りは、安心した大学生活を送ることはできない……。どうにかして、それを使用できないようにしなくては……)
時田がそう思っている矢先、知り合いの音声送信が届いてきた。
『あの時、僕が知っていたら……』
その声はK君のものだった。K君は中学生時代のクラスメイトで、中学卒業後は、工学部系の高等専門学校へ進学していた。
(K君!?)
『うん。真司君、元気かい?』
工学部系の学校に通ったK君なら……何か参考意見をもらえるかも知れない……!
3月の引っ越しの日まで、あと5日ある……! K君に相談して、少しでもいい方向に事をもっていかないと……!
時田は3月某日、K君の家に行って、思考盗聴器について相談する事にした。




