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最凶の人生~思考盗聴器と共に生き、本当に一度死んだ男~  作者: 時田総司(いぶさん)
6章 束の間の高校編

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46 そう。そいつはリタイアという言葉を知らない。何度でも蘇る!! 不死鳥のように!!!!

 あの日――、卒業式の前日にパニックを起こしてから、時田は教習所も休んでいた。


「もう大学も断念するしか無いのかのう」


 シゲミからはそんな言葉も言われた。只々、時間が過ぎる。


(中学二年生の時と同じだ……。また朝が来る……。状況としては中学の時より酷い。被害の規模が、大きすぎる……)


 ところがある朝、ふと目が覚めた時――。

 何故か胸の奥に、微かな力が戻っているのを感じた。



「明日から、教習所に行くよ!」



 時田はその日、家族に決意表明をした。そして翌日から、再び教習所に通った。


「よろしくお願いします!」

「無理はしないでね」


 教官は温かく迎えてくれた。


「あんな事があったのに、よく平然と来れるな」


 陰でひそひそと後ろ指を指す者も居た。


(平常心、平常心)


 復帰直後から時田は自身とのトラウマと向き合う事になる。ナルが居る教習所。走るのはコース2。


(また至近距離で思考盗聴器を使われるかも知れない……。でも!


絶対にこの県を出て、真っ当な人生を送るんだ!!)


 その一心で時田は車に乗った。

 シートを調節、シートベルト、ミラーを調節する。サイドブレーキを確認、そして時田はフットブレーキを踏みながらエンジンを入れた。久しく聞いていなかったこのエンジン音は、何も気にせずに運転を楽しんでいた頃を思い出す様で懐かしかった。そして時田はルームミラー等を確認し、出発した。

 外周を回る。正直、トラウマを完全に振り払えてはいなかった。走っている最中に呼吸を乱したあの思い出が過ぎり、恐い。少しだけ、呼吸は荒くなっている、それでも、時田は車から降りることは無かった。


(さて、外周が終わった。ここから内側のコースに……)


 手を掛けたハンドルに、力が入る。


(入れた!)



 時田は何とか、習っていたコース2の道を完走し、教習を見事に受け抜く事ができたのだった!


(もう、大丈夫だ)


 時田はその時から、トラウマを克服していった。運転を楽しむ余裕さえ生まれた。そして日々、教習を受けていき――、



 仮免許の取得試験を受ける日が来た。



 仮免許の取得試験当日、時田達は教習所よりも大きな、自動車学校に集まった。

 まず、待合室の様な場所で、氏名、年齢、住所を用紙に書いた。


(! これは……)


 自身の個人情報を書く事になる。今、思考盗聴器で不特定多数の人間に監視されているので、個人情報がダダ洩れになっている。


(この状況について、ナルは何か感じているのだろうか)


 ナルに目をやる。すると――、


「! ……」


 ナルは何か、ダラダラと冷や汗でも掻きそうな状態だった。

(やっと気付いたか、自分が行っている行為について――。子供の悪ふざけにしては度が過ぎている。さあ、さっさと思考盗聴器の使用を止めろ! 取り返しのつかない状況になっても、誰も助けてくれないぞ)


 時田はそんなナルの様子を横目に、さらさらと記入事項を記入していった。


 ――数分後。


「いやー、緊張するよね。住所とか書くの」



「ズデッ」



(そっちかよ……)


 どうやらナルには、人のコトを思いやる心はおろか、人のコトを気にする心すら持っていないらしい。


(皆が氏名、年齢、住所を書いているんだ。そんな中で思考盗聴器を使われているヤツがいるんだぞ。そいつの個人情報がどうなってしまうか……フツー気付くだろ……何カ月思考盗聴器使ってんだ? ……アレ? 俺は何カ月こんな目に遭っているんだ? 五月からだと……あ、十カ月だ。……良く生きてるな、俺)


 自分の丈夫さを心底感じながら、時田は筆記試験を受けに試験会場へ移動した。



 ――、


 会場の席に着く。


(これ、試験とか受けてるときにいつも思うんだけど、思考盗聴器の所為でカンニングの疑いかけられて、落ちるとか、無いよね?)


「始めて下さい」


 時田のそんな心配をよそに、仮免許の筆記試験が始まった。

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